こんにちは、北條です。
今回は「事業承継」をテーマにお話しします。
どの業界でも、承継問題でもめるケースは少なくありません。
実際、私自身も「なかなか席を譲らない先代経営者」の問題で、頭を悩ませたことがあります。
現代において事業承継がうまく進まないのには、さまざまな要因があります。
そしてその中でも特に、先代経営者と後継者、それぞれの立場の違いが、承継を難しくしている大きな要因だと感じています。
今回はその背景について、3つの視点から深掘りしてみたいと思います。
前回の記事では、ビジネスのライフサイクルについてお話ししました。
神田昌典『60分間・企業ダントツ化プロジェクト』より
創業期に必要なのは、
根性
カン
勢い
この「3つの力」です。
一方、成熟期以降のフェーズで求められるのは、
先見性
知性
市場が成熟し、利益が伸び悩む中でビジネスを再構築する力が、後継者には求められるのです。
つまり、先代と後継者ではまったく違う力が求められるのです。
しかも現代では、商品のライフサイクルがどんどん短くなっています。
『拡張の世紀』ブレッド・キングより
新たな事業に参入しても、すぐに市場が成熟してしまう。
つまり後継者が舵を取る頃には、すでに既存事業の成長余地がなくなっており、新しい柱を作らなければ利益を維持できない状況が多いのです。
たとえば、前回取り上げたレンタルビデオ店の例。
先代がビデオ全盛期に立ち上げ、順調だったものの、今では配信サービスが主流に。
この状況では、当然ながら従来のやり方が通用しません。
新しいビジネスを立ち上げる必要がありますが、既存事業も同時に守る必要があるため、すべてを刷新するわけにはいきません。
結果として、社内での摩擦が起きやすく、後継者の身動きが取れないという問題が発生します。
次の理由は、「経営の可視化ができていないこと」です。
先代経営者が「譲りたい」と言いながら、実は情報を開示せず、引き継ぎが進まない。
これは意図的な場合もあります。
つまり、**「本音では譲りたくない」**という心理が、行動に現れてしまっているのです。
多くの昭和の創業者は、
貧しさから抜け出したい
兄弟との比較にコンプレックスを感じていた
不自由な家庭環境から自由を得たかった
といった否定的な動機から起業しています。
そうした背景から、会社そのものが自己肯定感の源泉になっている。
つまり、「会社=自分の存在価値」になっているのです。
結果的に、
「自分がいないと会社が回らない」
↓
「だから譲れない」
という心理構造が生まれます。
実際には「譲る気がある」と口で言いながらも、重要な情報や実権を渡さないケースは非常に多いです。
こうなると、後継者は精神的にも疲弊してしまいます。
これは少し厳しい視点ですが、重要な点です。
創業者世代は、強い想いや情熱を持って事業を始めています。
「美味しいラーメンを作りたい」「世の中にない価値を届けたい」——そういう原動力があったわけです。
一方、後継者はというと、
「人生で成し遂げたいことがない」
「何をやりたいか分からない」
という状態に陥っていることが多いです。
会社を継ぐという選択はしているものの、「情熱」や「パッション」が不足している。
そのために、課題を乗り越える意欲が湧かず、ビジネスも伸び悩む。
こうした「想いの差」も、承継がうまくいかない理由の一つになっているのです。
特に「やりたいことが見つからない」という声は、後継者の間でよく聞かれます。
このように、現代の事業承継が難しい理由には、
ビジネスモデルの老朽化
経営のブラックボックス化
後継者のパッション不足
という3つの要因があります。
この構造を理解することで、承継の話し合いも、少し違った視点で進められるようになるかもしれません。
次回のブログでは、特に最後に触れた
「なぜ後継者はやりたいことが見つからないのか?」
について深掘りしていきます。
お楽しみに。
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