こんにちは、北條です。
前回は、M&Aにおける「売り手側が悪質なケース」についてお話ししました。
今回はその続編として、「買い手側が悪質なケース」=M&A詐欺についてお伝えします。
昨今、中小企業の間でもM&Aは一般的になってきていますが、
それと同時に、詐欺的なM&A取引も急増しています。
特に今回ご紹介するのは、売却側が信頼して取引を進めた結果、資産を奪われて破産に至った、
非常に悪質なM&A詐欺の実例です。
これからM&Aを検討している方には、ぜひ最後までお読みいただきたい内容です。
M&A詐欺とは、表面的には事業承継や企業成長の手段を装いつつ、
実際には相手企業の資産を奪うことを目的とした悪質な取引です。
最近では、特に**「買い手側」が詐欺を仕掛けるケース**が増えており、
中小企業経営者にとって非常にリスクの高い局面が増えています。
私の知人である、ある衣料品メーカーの経営者のケースをご紹介します。
非常に真面目で誠実な方です。
その方は、銀行の紹介でM&Aの話を受け、会社を売却することに。
買い手側とも何度も面談を重ね、信頼関係を構築した上で契約に至りました。
しかし、悲劇はここからです。
買収が成立した直後、買い手となった人物は会社に残っていた資金をすべて引き出し、
そのまま音信不通に。
しかも、最悪だったのは、個人保証の解除前だったこと。
その結果、残された多額の負債が売り手側に残り、破産に追い込まれてしまいました。
誠実に事業をしてきた社長が、最後に全てを失うという、あまりにも理不尽な結末です。
この手のM&A詐欺でよく見られる構図は、以下の通りです。
買収後、会社の資産(現金や設備)を抜き取る
個人保証の引き継ぎ前に逃げる
会社は倒産、負債は売り手に残る
さらに悪質な場合、買い手が計画的に仕掛けてくるケースもあります。
もう一つの落とし穴が、「M&A仲介会社のいい加減な対応」です。
仲介業者の中には、成約することが目的化しており、
契約成立後のトラブルやリスクについて無関心なケースもあります。
報酬を得るために、
相手企業の本質的なリスクを伝えない
必要なデューデリジェンスを省略する
買い手を無条件で「良い会社です」と紹介する
といった対応をされることも。
そのため、仲介業者にすべてを任せるのではなく、自ら慎重に調査する姿勢が重要です。
以下のような対策を講じることで、M&A詐欺のリスクを軽減できます。
買い手企業の実態や財務状況を第三者機関で精査する
個人保証の解除は売却後できるだけ早く行う
譲渡前に資産の移動が起こらないよう契約書で規定する
弁護士・会計士と連携し、法務・税務リスクを明確にしておく
売却後も一定期間モニタリングする条項を設ける
今回のケースは非常に極端な例かもしれませんが、
中小企業を取り巻くM&A環境ではこのような事件は決して珍しくないのです。
「何度も会って信頼関係ができていたから大丈夫」
「紹介元が銀行だから安心」
というような考えは、今の時代では通用しません。
M&Aは本来、事業拡大や承継において大きな力を持つ戦略です。
だからこそ、そのチャンスを最大限に活かすためにも、
相手の本質と契約内容を徹底的に確認し、リスク管理を怠らないことが重要です。
もしご不安やお悩みがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。
それでは、また次回のブログでお会いしましょう。
お気軽にお問い合わせ、ご相談ください。