2026.04.20

なぜ「地方に進出すれば安く済む」は幻想なのか?──地方の“コスト優位”神話

こんにちは。
アカネサス代表の北條です。

今週は「地方」に関する構造について、3回に分けて考えていきます。

第1回となる今回は、次のテーマです。

「地方=安い」という発想が、構想と実装を失敗させる。


「地方は安い」という前提

企業が地方に進出する際、よく語られる理由があります。

  • 地価が安い

  • 人件費が安い

  • 生活コストも低い

こうした理由から、

地方にはコスト優位がある

と考えられがちです。

しかし、私は多くの現場を見てきて、
むしろ逆の確信を持つようになりました。

地方は決して安くない。
むしろ“高くつく構造”を持っている。


「安く見える」構造

まず、「地方が安く見える理由」を整理してみましょう。

確かに次の点は事実です。

  • 地価が安い

  • 時給水準が都市より低い

  • 建設費や生活コストも低く見える

しかし、これらは

表面価格

にすぎません。

実際の事業では、

設計の詰めが甘い地方進出ほど高くつく

というケースが多く見られます。

都市より地方の方が、
結果的に利益率が下がる企業も少なくありません。


人件費は本当に安いのか

地方進出で最もよく語られるのが
「人件費が安い」という点です。

確かに都市部より時給は低いかもしれません。

しかし本当に見るべきなのは、
次の2つです。

  • 採用にかかる時間とコスト

  • 定着率

地方では次のような問題が起きやすくなります。

  • 求人を出しても応募が来ない

  • 半年で辞めてしまう

  • 教える人材が不足している

  • 若手がいないため継承できない

結果として、

安いはずの人件費が、採用難・教育負荷・早期離職によって高騰する

という現象が起きます。


地方のもう一つの問題

地方には、もう一つの構造的な問題があります。

「やってくれる人」がいない

という点です。

例えば、

  • 修理できる人がいない

  • メンテナンスできる工務担当が辞めると止まる

  • 設備業者が遠く、外注費や対応時間が跳ね上がる

こうした問題は、
特に設備依存の産業で深刻になります。

食品工場はその典型です。

食品工場は地方に多く立地しています。

そのため、

  • 人材

  • メンテナンス

  • インフラ

といった地方特有の課題が、
そのまま産業構造の問題になります。


地方進出で起きた実例

ある企業の例を紹介します。

都市部から地方へ第2工場を建設し、

「コストが抑えられる」

と楽観的に考えていました。

しかし実際には次の問題が起きました。

  • 設備トラブル時の対応が遅れ、生産停止が頻発

  • 人材不足でベテラン社員が長距離出張

  • 教育速度が遅く、歩留まりが回復しない

結果として、

利益率は本社より悪化

し、
数年後には工場の規模を縮小することになりました。


表面コストで地方を選ぶと失敗する

「土地が安い」
「賃金が安い」

こうした条件だけで地方を選ぶと、

実装段階で見えないコストに追い詰められる

ことになります。

地方進出の失敗の多くは、

コスト優位という幻想

から始まります。


地方の本当の優位性

では、地方には優位性がないのでしょうか。

決してそんなことはありません。

地方の本質的な強みは、

構造を再設計できる余白

があることです。

都市では難しいことも、
地方では設計から作り直すことができます。

この「余白」こそが、
地方の本当の可能性です。


次回予告

次回は、

「地方の再起不能構造」と、そこから始まる設計

について考えます。

地方の産業が抱える構造的な問題と、
そこからどのように再設計が可能なのか。

もう少し深く掘り下げていきます。


── 北條竜太郎

お気軽にお問い合わせ、ご相談ください。