2026.08.28

【経営は総合力2】営業は最強だった──それでも倒れた漬物メーカーの話【全3回】

こんにちは。
アカネサス代表の北條です。

本シリーズでは、

「食品メーカーの経営は、最弱点で決まる」

というテーマを扱っています。

第2回となる今回は、

「営業は10点満点。それでも倒産した」

そんな漬物メーカーの事例です。


シリーズ目次(全3回)

  • 第1回 製品は完璧だった──それでも倒れた醤油メーカーの話
  • 第2回 営業は最強だった──それでも倒れた漬物メーカーの話
  • 第3回 経営者は、なぜ最弱点を見ないのか

1.年商15億円の会社が、3ヶ月で消えた

3年前、ある漬物メーカーが倒産しました。

  • 年商15億円
  • 全国1,000店舗に納品

営業力だけを見れば、文句なしの10点満点。

しかし──

たった3ヶ月で会社は消えました。

原因は、O157(食中毒)です。


2.営業は圧倒的だった

東海地方にある老舗漬物メーカー。

二代目社長は営業畑で、
誰とでもすぐに打ち解け、販路を一気に広げていきました。

  • スーパー
  • 惣菜チェーン
  • ドラッグストア

納品先は全国1,000店舗。

営業チームは20人。

社長の口癖は、こうでした。

「営業こそが経営だ」

営業力:10点満点。

ここだけを見れば、成功企業そのものです。


3.しかし、数字は静かに崩れていた

売上は順調に伸びていました。

  • 売上:10億円 → 15億円(3年で+50%)

しかしその裏で、別の変化が起きていました。

  • 粗利率:23% → 17%(値引き・販促費増)
  • 営業利益:+1,200万円(わずか0.8%)
  • 在庫:2.5ヶ月 → 4.1ヶ月(生産過多)
  • クレーム:年20件 → 年80件

売上は伸びているのに、利益が残らない。

さらに、品質トラブルの兆候も増えていました。

それでも社長は言います。

「売上が伸びてるから大丈夫」

見たくない数字から目を逸らしていた。

それが、この会社の最弱点でした。


4.崩壊は一瞬だった

ある夏、商品からO157が検出されます。

原因は、外部委託工場。

品質管理責任者の回答はこうでした。

「現地監査はしていませんでした」

結果は壊滅的でした。

  • 全商品回収費用:2.8億円
  • 取引先1,000店のうち900店が取引停止
  • 銀行融資ストップ

そして──

3ヶ月後、倒産。

年商15億円の会社が、90日で消えたのです。


5.なぜ品質管理は「2点」だったのか

社長はこう言っていました。

「今まで問題なかった。現場はちゃんとやってる」

しかし実態はこうです。

  • HACCP未対応
  • 外注工場の監査ゼロ
  • 記録は紙(再発防止不可)
  • 衛生教育なし

製造部長は60代の1人のみ。
しかも社長と分断されていました。

過去5年の投資配分を見ると、さらに明確です。

  • 営業強化:2億円
  • 品質管理:0円

品質管理:2点(実質0)


6.経営は“掛け算”で決まる

経営は足し算ではありません。掛け算です。

営業力 × 品質管理 = 信用

この会社は、

10 × 2 = 20

しかし──

O157で品質が0になった瞬間、

10 × 0 = 0

営業力10は、一瞬で無意味になりました。


7.もしHACCPに投資していたら

もし、この会社がHACCPを導入していたらどうなっていたか。

  • 導入費用:300万円
  • 補助金(2/3):200万円
  • 自己負担:100万円

内容:

  • 外注工場の定期監査
  • 記録のデジタル化
  • 衛生教育

効果:

  • リスクの早期発見
  • 食中毒リスクの大幅低減

回収費用2.8億円を回避できた可能性がある。

しかし社長はこう言いました。

「40年問題なかった」
「今さらHACCPはいらない」

結果、倒産。

自己負担100万円を惜しんで、15億円企業を失った。


8.実は、もう一つの倒産要因があった

この会社には、もう一つの爆弾がありました。

黒字倒産リスク

  • 売掛回収:60日
  • 在庫:4ヶ月
  • 営業CF:▲5,000万円/年
  • 借入依存:80%

売上は伸びても、現金は減り続けていました。

営業10 × 財務2 = 崩壊

これもまた掛け算です。


9.食品メーカーは6つの戦線で戦っている

食品メーカーの経営は、6つの要素で成り立ちます。

  1. 製品開発力
  2. 製造力
  3. 営業力
  4. 品質管理
  5. 財務
  6. 人材

どれか1つでも50点を切れば危険。
どれか1つでも0なら、確実に倒れます。

  • 第1回:製品10 × 営業2 → 倒産
  • 第2回:営業10 × 品質2 → 倒産

会社は、最弱点から崩れます。


10.教訓──強い会社ほど見落とす

営業が強い会社は、売上に安心します。
製品が強い会社は、品質に安心します。
財務が強い会社は、数字に安心します。

しかし──

会社を倒すのは、見えていない部分です。

人は、

  • 見たい数字だけを見る
  • 見たくない数字は見ない

そして、

見なかった場所から、会社は崩れます。


11.次回予告(最終回)

ここまでで見てきた通り、

  • 製品10 × 営業2 = 倒産
  • 営業10 × 品質2 = 倒産

ではなぜ、経営者は最弱点を見ないのか。

答えはシンプルです。

強みに逃げるからです。

次回最終回では、

「経営者は、なぜ最弱点を見ないのか」

を掘り下げます。


── 北條竜太郎

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