2026.09.11

「負けない構造」の設計図【2】なぜ森岡毅のやり方はずるいのか【全6回】

こんにちは。
アカネサス代表の北條です。

前回は、「なぜ森岡毅氏が嫌いなのか」という少し踏み込んだテーマについてお話ししました。

結論から言えば、私が感じている違和感は「ずるさ」にあります。

今回はその核心である、「負けない構造」の中身について、具体的な数字を交えながら考えてみたいと思います。


刀の資金構造

株式会社刀は、

  • 大和証券グループから約140億円
  • クールジャパン機構から約80億円

合計220億円規模の資金調達を行っています。

ここで押さえておきたいのは、クールジャパン機構の原資です。

これは国民が納めた税金によって支えられている公的資金です。

私たちの税金が、

「日本のコンテンツ産業を世界に発信する」

という名目で投じられているわけです。

当初は、

「2020年代後半に大型IPOを実現する」

という構想も語られていました。

日本発のエンターテインメント企業として、ディズニーやユニバーサルに並ぶ第三極を目指す。

非常に大きなビジョンです。

しかし、直近の決算を見ると、

  • 累積赤字:約62億円
  • 株主資本:186億円 → 127億円

という状況になっています。

大型IPOという構想とは裏腹に、現実は損失の吸収局面に入っているように見えます。

投じられた80億円の公的資金は、今どうなっているのか。

この問いに対して、現時点で明快な答えは見当たりません。


リスク配分の非対称性

2025年6月、NewsPicksの調査報道によって一つの構造が明らかになりました。

森岡氏が保有する個人会社「森岡マーケティング研究所」に対して、

「森岡マーケティングメソッド使用料」

という名目で、株式会社刀から約7億円規模の支払いが行われていたと報じられています。

もちろん、これは違法ではありません。

知的財産に対してロイヤリティを支払うこと自体は、企業経営では珍しいことではありません。

しかし、私が問いたいのは別の部分です。

出資者がリスクを取り、

公的資金も投入され、

会社自体は累積赤字を抱えている。

その一方で、個人会社には対価が支払われ続ける。

この構造は、

「共に戦いましょう」

「日本を元気にしたい」

というメッセージと整合しているのでしょうか。

刀が累積赤字を積み上げている間も、メソッド使用料は支払われていたとされています。

つまり、

会社という船が沈んでも、

創業者個人は沈まない。

私が「ずるい」と感じるのは、このリスク配分の非対称性です。


勝率73%と敗率27%

森岡氏はジャングリア沖縄について、

「成功確率73%」

と公言しました。

多くの人は、

「73%なら高い」

と感じたでしょう。

しかし同じ数字を、

「失敗確率27%」

と言い換えるとどうでしょうか。

700億円規模の巨大プロジェクトが、4回に1回以上失敗する可能性がある。

印象は大きく変わります。

そして重要なのは、

その27%が現実になったとき、誰が損失を負うのかということです。

投資家でしょうか。

地元経済でしょうか。

従業員でしょうか。

それとも本人でしょうか。

仮に失敗したとしても、

「成功確率73%とは言っていた」

「今回は27%側に入った」

と言うことができます。

需要予測が外れれば外部環境のせい。

組織が崩れれば人材不足のせい。

そうした説明が可能な構造になっているように見えるのです。


儲けたいなら儲ければいい

誤解しないでいただきたいのですが、

私は経営者が儲けること自体を批判しているわけではありません。

経営者が利益を追求するのは当然です。

株主への責任もあります。

たとえば堀江貴文氏のように、

「私は金儲けがしたい」

と明言するのであれば筋が通っています。

私が違和感を持つのは、

「日本のため」

「皆さんのため」

という大義を掲げながら、

公的資金を活用し、

個人としての利益も確保する構造です。

儲けることは悪くありません。

しかし、それを過度に美談化する必要もない。

それが私の率直な考えです。


それでも評価すべき点がある

批判だけでは公平ではありません。

私が高く評価している点もあります。

それは撤退判断の速さです。

イマーシブ・フォート東京は、

2024年3月開業。

そして2025年2月末での閉業が発表されました。

開業からわずか11か月です。

多くの経営者は損切りができません。

「もう少し頑張れば」

「来年こそは」

そうやってサンクコストに引きずられます。

しかし森岡氏は11か月で見切りをつけました。

これは経営者として非常に重要な能力だと思います。


オリックスで学んだ「退き方」

私はかつてオリックスに在籍していました。

宮内義彦氏のもとで学んだことがあります。

オリックスの強さは、

攻めではなく「退き方」にありました。

ダメだと判断したら撤退する。

未練を残さない。

サンクコストに縛られない。

その姿勢が会社の強さを支えていました。

森岡氏にも、その能力があります。

だからこそ私は惜しいと思うのです。

撤退できる経営者なのに、

なぜ同時に「負けない構造」を作るのか。


次回予告

次回は「謙虚さの3つの層」について考えます。

森岡氏の限界は、才能の裏返しなのかもしれません。

経営者にとって本当の謙虚さとは何なのか。

その視点から掘り下げていきます。

── 北條竜太郎

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