こんにちは。
アカネサス代表の北條です。
前回は、「なぜ森岡毅氏が嫌いなのか」という少し踏み込んだテーマについてお話ししました。
結論から言えば、私が感じている違和感は「ずるさ」にあります。
今回はその核心である、「負けない構造」の中身について、具体的な数字を交えながら考えてみたいと思います。
株式会社刀は、
合計220億円規模の資金調達を行っています。
ここで押さえておきたいのは、クールジャパン機構の原資です。
これは国民が納めた税金によって支えられている公的資金です。
私たちの税金が、
「日本のコンテンツ産業を世界に発信する」
という名目で投じられているわけです。
当初は、
「2020年代後半に大型IPOを実現する」
という構想も語られていました。
日本発のエンターテインメント企業として、ディズニーやユニバーサルに並ぶ第三極を目指す。
非常に大きなビジョンです。
しかし、直近の決算を見ると、
という状況になっています。
大型IPOという構想とは裏腹に、現実は損失の吸収局面に入っているように見えます。
投じられた80億円の公的資金は、今どうなっているのか。
この問いに対して、現時点で明快な答えは見当たりません。
2025年6月、NewsPicksの調査報道によって一つの構造が明らかになりました。
森岡氏が保有する個人会社「森岡マーケティング研究所」に対して、
「森岡マーケティングメソッド使用料」
という名目で、株式会社刀から約7億円規模の支払いが行われていたと報じられています。
もちろん、これは違法ではありません。
知的財産に対してロイヤリティを支払うこと自体は、企業経営では珍しいことではありません。
しかし、私が問いたいのは別の部分です。
出資者がリスクを取り、
公的資金も投入され、
会社自体は累積赤字を抱えている。
その一方で、個人会社には対価が支払われ続ける。
この構造は、
「共に戦いましょう」
「日本を元気にしたい」
というメッセージと整合しているのでしょうか。
刀が累積赤字を積み上げている間も、メソッド使用料は支払われていたとされています。
つまり、
会社という船が沈んでも、
創業者個人は沈まない。
私が「ずるい」と感じるのは、このリスク配分の非対称性です。
森岡氏はジャングリア沖縄について、
「成功確率73%」
と公言しました。
多くの人は、
「73%なら高い」
と感じたでしょう。
しかし同じ数字を、
「失敗確率27%」
と言い換えるとどうでしょうか。
700億円規模の巨大プロジェクトが、4回に1回以上失敗する可能性がある。
印象は大きく変わります。
そして重要なのは、
その27%が現実になったとき、誰が損失を負うのかということです。
投資家でしょうか。
地元経済でしょうか。
従業員でしょうか。
それとも本人でしょうか。
仮に失敗したとしても、
「成功確率73%とは言っていた」
「今回は27%側に入った」
と言うことができます。
需要予測が外れれば外部環境のせい。
組織が崩れれば人材不足のせい。
そうした説明が可能な構造になっているように見えるのです。
誤解しないでいただきたいのですが、
私は経営者が儲けること自体を批判しているわけではありません。
経営者が利益を追求するのは当然です。
株主への責任もあります。
たとえば堀江貴文氏のように、
「私は金儲けがしたい」
と明言するのであれば筋が通っています。
私が違和感を持つのは、
「日本のため」
「皆さんのため」
という大義を掲げながら、
公的資金を活用し、
個人としての利益も確保する構造です。
儲けることは悪くありません。
しかし、それを過度に美談化する必要もない。
それが私の率直な考えです。
批判だけでは公平ではありません。
私が高く評価している点もあります。
それは撤退判断の速さです。
イマーシブ・フォート東京は、
2024年3月開業。
そして2025年2月末での閉業が発表されました。
開業からわずか11か月です。
多くの経営者は損切りができません。
「もう少し頑張れば」
「来年こそは」
そうやってサンクコストに引きずられます。
しかし森岡氏は11か月で見切りをつけました。
これは経営者として非常に重要な能力だと思います。
私はかつてオリックスに在籍していました。
宮内義彦氏のもとで学んだことがあります。
オリックスの強さは、
攻めではなく「退き方」にありました。
ダメだと判断したら撤退する。
未練を残さない。
サンクコストに縛られない。
その姿勢が会社の強さを支えていました。
森岡氏にも、その能力があります。
だからこそ私は惜しいと思うのです。
撤退できる経営者なのに、
なぜ同時に「負けない構造」を作るのか。
次回は「謙虚さの3つの層」について考えます。
森岡氏の限界は、才能の裏返しなのかもしれません。
経営者にとって本当の謙虚さとは何なのか。
その視点から掘り下げていきます。
── 北條竜太郎
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