こんにちは。
アカネサス代表の北條です。
全3回でお届けしている「食品EC対談」も、いよいよ今回が最終回です。
前回は、株式会社ジャパンフードカンパニー代表取締役であり、食品EC特化型コンサルタントの南口龍哉氏に、Step1「売れる1品の確立」についてお聞きしました。
前回の主な内容は、以下の通りです。
・投資回収モデルの構築
・初回LTVとCPOの考え方
・3C視点での商品設計
今回は、Step2「EC商圏の展開と商品の用途付加」と、Step3「業務効率化と収益性の向上」についてお届けします。
引き続き、南口氏にお話を伺います。
北條:
「売れる1品」ができたら、次は何をすべきでしょうか。
南口:
次は「体積」を増やします。
具体的には、以下の3つです。
北條:
自社サイトがいいのか、楽天やAmazonなどのモールがいいのか、何をどう考えればいいかわからないという声をよく聞きます。
南口:
「商圏」という発想をすれば、答えは明確です。
出ていった方がいい。
もちろん企業事情や製品ジャンル、カテゴリーによって優先度は変わりますが、多くのモールに出店していくことが原則です。
北條:
どのモールに出せばいいでしょうか。
南口:
楽天、Amazon、Yahoo!ショッピング、au PAY マーケット、LINEギフトなど、有名モールであれば問題ありません。
ただし、聞いたことのないモールや、企業名は知っていても実際に使っている人をあまり知らないモールには注意してください。
たいして売れないにもかかわらず、少額の月額費用で1〜2年契約を結ばせるような営業もあります。
北條:
私もそういった営業を受けた経験がありますね(笑)。
北條:
続いて、2つ目の「用途の付加」について教えてください。
南口:
用途の付加とは、自家用だけでなく、ギフトにも使えるように包材や仕様を変えることです。
北條:
具体的には、どのような対応をするのでしょうか。
南口:
食品ECのギフトマーケットでは、母の日、父の日、敬老の日など、シーズナルイベントごとに包材を変えたり、専用のメッセージカードを付けたりして、イベントに合った商品としてプロデュースしています。
最近では、華美なギフトを避けるお客様も増えているため、シンプルな飾り付けバージョンを出すショップも増えています。
北條:
「自社の製品はギフトに合うのか」という相談もありそうですね。
南口:
よくありますが、ギフト仕様の商品は作るべきです。
たとえばバレンタイン市場では、ECの普及に伴い「チョコ以外」の検索が増えています。
かつての「告白」という色合いは薄まり、現在は「自分へのご褒美」や「友人との交流」が主流です。
実際に、「ハート型の肉」などを展開するショップも出てきています。
北條:
非定番の商材でも戦える市場があるのですね。
南口:
はい。
この「〇〇以外」という需要は、母の日や父の日などの成熟した市場でも見られる共通傾向です。
定番から外れたニーズを狙い、ギフト仕様を強化することは、現在の市場で攻めるうえで重要なポイントです。
北條:
多くの企業は、熨斗や数量変更などについて「言っていただければ対応します」と柔軟に対応しています。
ただ、南口さんは以前、それではダメだとおっしゃっていましたね。
南口:
はい。
ECでは「言っていただければ対応します」はNGです。
対応できることは、分かりやすい場所に明記することが必須です。
わかりにくい場所に書いているだけでは、書いていないのと同じです。
お客様全員が「わからなかったら聞く」わけではありません。
WEBの世界では、「わからなかったら去る」のです。
この前提で、自社サイトを見直す必要があります。
南口:
3つ目は、商品数、つまりSKUの増加です。
企画変更レベルのものから、仕様やスペック開発を含むものまで、SKUを増やしていきます。
北條:
どのような方向性で増やすのでしょうか。
南口:
大きく分けると、仕様スペックでの優位性、またはコスパ軸で差別化する方向と、情緒的価値で差別化する方向があります。
前者は自家用商品で有効です。
後者はギフト商材で採用されることが多いです。
北條:
具体例はありますか。
南口:
たとえば、ご支援先の魚惣菜メーカーでは、西京焼きセットや鯖セット、塩焼き・煮つけなど、基本となるSKUはそこまで増やさず、セット組によって特化商品に見せる形でアイテム数を増やしています。
また、「この中から10品好きなものが選べる」という商品を販売し、非常に人気が出ています。
同じ魚惣菜好きでも、「西京焼きが好きな人」と「鯖が好きな人」は異なります。
SKUを増やすとは、単純に商品を増やすことではありません。
お客様が選びやすい入口を増やすことなのです。
北條:
Step1、Step2で売上を拡大していくと、次にどのような課題が出てくるのでしょうか。
南口:
売上が数千万円から1億円弱になってくると、食品ECでは限界利益率が高くないため、「ある程度売れるようになってきたが、収益性が課題」という状態になりやすいです。
そこで進めるのが、バックヤードの自動化です。
北條:
具体的には、どのような内容でしょうか。
南口:
ECには、多くの先人たちの「あったらいいな」を形にした既存ツールやシステムが豊富にあります。
たとえば受注処理では、50〜70%の自動化、人による確認が不要な処理、出荷日の自動計算など、多くのシステムやツールが揃っています。
コストも月額数千円から利用できるものや、件数比例型のものが多く、変動費化しやすい点も魅力です。
南口:
ここで、絶対にやってはいけないことを2つお伝えします。
絶対に自社オリジナルシステムを組まないことです。
既存の月額制ツールを使い、自社のフローをシステムに合わせる方向で進めてください。
北條:
それはなぜでしょうか。
南口:
自社開発は数百万円以上の費用がかかります。
さらにブラックボックスになりやすく、少しの修正や改良にも都度コストが発生します。
一方で既存ツールは継続的にアップデートされているため、更新コストがかからない点も魅力です。
北條:
2つ目の「絶対にやってはいけないこと」は何でしょうか。
南口:
マーケティング業務や受注処理の外注化です。
これは収益性の悪化を招きます。
特に、売上が小さい時期に固定費を抑える目的で、売上や件数に連動した成功報酬型で外部委託するケースがあります。
しかし、これは非常に危険な戦略です。
北條:
なぜでしょうか。
南口:
本来、売上が上がることで下がるべきコスト、つまり人件費率が、売上に比例して増大し、利益を圧迫するからです。
さらに、自社にノウハウが蓄積されないという致命的な問題もあります。
北條:
確かに。人件費の考え方も独特ですね。
南口:
はい。
発送に関わる人件費は変動費的に増加します。
一方で、受注処理やマーケティングの分析・プランニングに関わる人件費は、ほぼ固定費として捉えて問題ありません。
年商100万円でも1億円でも、専任者1名の必要性は大きく変わりません。
売上が増えても、1名で対応できる範囲が広いからです。
実際に私の支援先でも、年商1億円を1.5名で運営しているショップや、年商2億円でもEC担当1名と社長で対応しているショップがあります。
この人件費率、つまり固定費率を下げることが、売上成長に伴う収益性アップの大きな要素になります。
北條:
最後に、今回の内容をまとめていただけますか。
南口:
3つのStepを実践しても「年1,000万円の壁」を超えられない場合は、根本的な商品力の見直しが必要です。
道しるべは同じでも、企業ごとに最適な戦略や戦術は異なります。
「うちの場合はどうすればいいのか」と悩んでいる方は、ぜひ一度ご相談ください。
食品EC歴14年の知見に基づき、個別の状況に合わせたご提案をさせていただきます。
北條:
投資の判断基準を明確にし、正しいステップを踏むこと。
私たちのクライアントの皆様にも、この「道しるべ」を提示していきたいと思います。
南口さん、全3回にわたり貴重なお話をありがとうございました。
全3回の食品EC対談を通じて、食品ECを伸ばすために必要な考え方が見えてきました。
食品ECは、商品を並べれば売れる事業ではありません。
売れる1品を作り、投資回収モデルを設計する。
商圏を広げ、用途を増やし、SKUを整える。
そして、売上拡大に合わせて業務を効率化し、収益性を高める。
この順番を間違えないことが重要です。
ECが伸び悩んでいる場合、問題は「頑張り不足」ではなく、構造にあるのかもしれません。
まずは、自社のECがどのStepで止まっているのかを確認することから始めてみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
── 北條竜太郎
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