こんにちは。
北條です。
前回は、沖縄の「テラスクラブ」で私が実際に体験した6つのサービスについてお話ししました。
どの出来事にも共通していたのは、
「頼んでいないのに、すでに完了していた」
ということです。
今回は、
なぜそんな魔法のようなサービスが実現できるのか
について考えてみたいと思います。
まず前提として、テラスクラブの客室数は68室です。
比較してみましょう。
68室という規模は、スタッフが宿泊客の顔や名前、行動パターンを把握できる限界に近いサイズではないかと思います。
大規模ホテルでは難しいことが、この規模だから可能になるのです。
前回紹介した6つの体験を振り返ると、実現のために必要なのは大きく3つの能力だと感じます。
例えば、
これらはすべて、
見ているかどうか
の問題です。
忙しいホテルでは、スタッフは目の前の業務をこなすだけで精一杯になります。
しかし68室という規模だからこそ、お客様の小さな変化に気づける余裕が生まれます。
プールでレストラン予約の結果を伝えてくれた出来事を思い出してください。
あのサービスには最低でも複数のスタッフが関わっています。
つまり、
個人の記憶ではなく、チームとして情報を共有している
のです。
「あのお客様は今どこにいて、何を必要としているのか」
をリアルタイムで把握している状態です。
最も驚いたのは、お茶とブランケットの対応です。
スタッフは、
という情報から、
「温かいお茶とブランケットを用意しよう」
と判断しています。
しかも上司への確認はありません。
マニュアルに
「冬の散歩帰りにはお茶を出す」
などと書いてあるはずもありません。
現場スタッフが自分で考え、自分で決めているのです。
さらに印象的だったのが、前回お話ししたエクスペディア予約の件です。
夜11時。
キャンセル不可プランにもかかわらず、
「大丈夫です」
とその場で対応してくれました。
しかも正規料金より安い金額のまま直接予約へ切り替えてくれたのです。
つまり、
売上が減る判断
を現場スタッフが行っているということです。
普通のホテルであれば、
「明日マネージャーへ確認いたします」
と言われるでしょう。
しかしテラスクラブでは、その場で判断が完了しました。
これは単なる接客力ではありません。
損失を伴う判断まで含めた、
本当の意味での権限委譲
です。
ここまでを整理すると、
68室だから全員が見える
情報がリアルタイムで流れる
現場が自分で考え、動ける
この3つが揃って初めて、
「言われる前に、終わっている」
が実現します。
逆に言えば、どれか1つ欠けても成立しません。
3つが連動して初めて価値が生まれるのです。
ここで重要なのは、
この仕組みは高額な設備投資によって生まれているわけではない
ということです。
特別なシステムを導入しているわけでもありません。
有名コンサルタントを雇っているわけでもありません。
必要なのは、
という人の動き方です。
そして68室という規模が、それを可能にしています。
大規模になれば、
テラスクラブは、
大きくならないことでサービス品質を守っている
とも言えるのです。
この話を考えているうちに、私はあることに気づきました。
この構造は、日本の高級旅館そのものです。
女将が宿泊客の顔を覚える。
好みを把握する。
言われる前に動く。
前回苦手だと言った食材が、次回は最初から外されている。
そんな体験をしたことがある方もいるでしょう。
世界のラグジュアリーホテルは、
システムで品質を再現しようとします。
マニュアルがあり、
研修があり、
チェックリストがあります。
一方でテラスクラブは、
人の連携によってサービスを実現している
のです。
これは旅館文化そのものです。
68室という規模も、高級旅館の客室数に近い。
世界のホテルランキングには載らないかもしれません。
しかし日本の旅館文化という視点で見ると、このサービス品質は極めて理にかなっています。
世界がシステムで追いかけているものを、日本は人で実現してきた。
テラスクラブは、その日本的な強みを現代のリゾートホテルに移し替えた希少な存在だと感じています。
ここまでホテルの話をしてきました。
しかし、この構造は本当にホテルだけの話でしょうか。
観察。
共有。
判断。
実は私たち食品メーカーの現場にも、そのまま当てはまるのではないでしょうか。
最終回では、
なぜ食品メーカーこそ「先読み」が必要なのか
について考えていきます。
── 北條竜太郎
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