こんにちは、北條です。
前回の記事では、私の家業である茜丸が倒産した際のストーリーと、そこからどのように立ち直っていったかについてお伝えしました。
そして、会社を成長させる経営者に共通する要素として、
「既存の枠組みにとらわれず、ゼロベースで新たな枠組みを作れる力」
が重要だという話もさせていただきました。
私自身、2007年に茜丸が倒産して以降、ゼロベースで新たな枠組みを作る経験が、事業を再生させるための大きなきっかけとなりました。
その中でも特に象徴的だったのが、業務用あんこの通販事業へのチャレンジです。
茜丸が倒産
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契約していた大手取引先との関係が終了
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与信リスクを理由に、卸との契約も次々と打ち切られる
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小規模なベーカリーであれば与信に関係なく取引できると気づく
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ベーカリー向けにネットであんこを販売しようと決断
こうして、業務用通販のネットショップを立ち上げるという、新たな挑戦を始めました。
ところが、いざスタートしてみると…
初月の売上はわずか8.5万円。
そこから半年間、売上は10万円前後をうろうろ。全く伸びませんでした。
なぜネットショップは失敗したのか?
当時は個人経営のベーカリーに直接訪問しながら販売もしていたのですが、ふと気づいたんです。
「そもそも、ターゲットであるパン屋さんがネットであんこを買っているのか?」
実際に訪問して話を聞いてみると…
「もう仕入れ先は決まっている」
「注文は電話かFAXでしている」
という声が多かったのです。
今でこそ、スマホやPCでの注文は当たり前かもしれませんが、当時はまだ食品業界にネットが十分に普及していない時代でした。
ネット通販は、
現場でスマホやPCを使う文化がない
自宅に戻ってからPCを開いてオーダーしなければいけない
というパン屋さんの実情と大きくズレていたのです。
その瞬間、ようやく気づきました。
「そりゃ売れないよね…」
今となっては当たり前のように思えるこの事実。
でも当時の私には、見えていなかったのです。
どんなふうに仕事をしているのか?
いつ「買おう」と思うのか?
どんな資料やチラシに目を通しているのか?
どんな場所でどんな働き方をしているのか?
こうした顧客のリアルな日常を、深く知ることができていなかったのです。
このような「売り手の都合で売る」マーケティングは、今でも多くの企業が陥っている罠です。
そこで私たちは、ネットショップを一旦やめ、電話とFAXで注文できる“カタログ通販”へと切り替える決断をしました。
ちなみに、楽天を使わなかったのには理由があります。
すでに楽天市場には、あんこ販売でレビュー3,000件を超える先行企業が存在していて、当時から圧倒的なシェアを握っていたからです。
そこで、競合が少ない自社サイトでの販売に切り替えましたが、それも簡単にはいきませんでした。
ただ、失敗を通じて得た学びは、非常に大きなものでした。
今回のブログでお伝えしたかったことは、以下の2点です。
ターゲットの行動・価値観・生活スタイルを深く知ること。
このプロセスなくして、売れる仕組みは作れません。
“いつものやり方”が通用しないときこそ、ゼロベースで考える柔軟さが問われます。
この失敗はつらいものでしたが、だからこそ次の一歩に繋がったと今では感じています。
少しでも皆さんの経営やマーケティングの参考になれば嬉しいです。
それでは、また次回。
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