2025.09.15

【売れる事業はこう作る】経営者として最も大事な「役割」とは?

こんにちは、北條です。

突然ですが、質問です。

経営者として一番大事な役割とは、何だと思いますか?

今回は、この問いの答えにもつながる、経営・マーケティングの本質的で重要なお話をお届けします。


経営戦略論の大家・三品和広先生との出会い

神戸大学の経営学部(およびMBA)に、三品和広先生という経営戦略論の第一人者がいらっしゃいます。
書籍も出されており、ご存じの方も多いかもしれません。

この方は、ハーバード・ビジネス・スクールで講演した唯一の日本人でもあります。

実は私も8年ほど前、神戸大学MBAを受験したことがありました。

筆記試験には合格したものの、面接で不合格に。
そして、その面接官が三品先生だったのです。

名乗られませんでしたが、著書やお顔を知っていたのですぐに気付きました。

面接では「あなた変わった人だね」と一言…。
結果はご想像の通りですが、いつか再チャレンジしたいと思っています。


売れる事業には「共通の法則」がある

さて本題に戻ります。

三品先生は、「業績が良い事業の事例研究」を行い、著書でもその分析結果について触れています。

1805社・約3000事業を分析し、業績が伸びている事業には共通のパターンがあることを導き出されました。

その中で得られた結論のひとつが、

「事業コンセプトが悪いと、いくら頑張っても成果は出ない」

というものです。


事業コンセプト=誰に、何を売るか?

商売には必ず「コンセプト(事業の定義)」があります。

それはつまり、

「誰に、何を売るのか?」

ということです。

たとえば、宝のない地面をどれだけ掘っても、何も出てきませんよね。

同じように、どれだけ優秀な経営者やスタッフ、多額の資金を投入しても、「そもそも売れない商品」であれば成果は出ません

まさに、「今さら炭鉱を掘っても儲からない」のと同じです。


芦別の旧炭鉱に学ぶ“市場選定”の重要性

先日、北海道の芦別という町に仕事で行ってきました。

かつて炭鉱で栄えたこの町も、今では人口約8,000人の小規模な街となっています。

もし、今この旧炭鉱に優秀な経営者とチームが乗り込んでも、良い成果は得られないでしょう。

現代で“掘るべき”なのは、シェールガスやメタンハイドレートなのです。

事業も同じで、成功の鍵は「どの市場で勝負するか?」にあります。


「売れないのは社員のせい」…それ、本当ですか?

業績が悪いと、社員のせいにして営業部門を詰める経営者もいます。

しかし、それはまったくの見当違いです。

売れる事業を作れていない経営者自身に、最大の責任があります。


経営者の役割は「事業領域の定義」

企業の組織は「経営層」「判断層」「実務層」の3層に分かれます。

その中で、経営層が果たすべき最大の役割とは、

「自社の事業領域をどう定義するか?」

つまり、「どこで勝負するか?」を決めることです。

ここが売上に最も大きなインパクトを与えるのです。


【実例】今、不調の食品メーカーが取るべき戦略とは?

さて、では現在苦戦している食品メーカーはどうすれば良いのでしょうか?


設備産業の特性上、事業転換は難しい

食品メーカーは設備投資が前提のため、業種の大転換は現実的ではありません

ではどうするのか?

答えは、

「同じ商品でも、売り先(=誰に売るか)を変えること」

です。


【事例】かまぼこを「プロテインフード」として再定義

かまぼこ業界は、現在、全体的に業績が低迷しています。

しかし、その中でも好調な企業があります。

それは、かまぼこを「フィッシュプロテイン」=プロテインフードとして見せ方を変えた企業です。

低脂肪・高タンパク・栄養豊富という特性を打ち出し、アスリートやトレーニング市場にリブランディングしたのです

まさに、

「誰に、何を、どのように売るか」

を再定義し直した成功例といえるでしょう。


経営者は“定義する人”であれ

社員にハッパをかける前に、経営者が「定義」を変えるべきです。

これは、サイゼリヤ創業者・正垣泰彦さんも同様のことをおっしゃっています。

「売上が伸びないのは立地などの要因であり、店主の責任ではない」と教育している

という姿勢は、まさに「事業立地」の重要性を物語っています。


弊社の事例:事業領域を再定義し続ける

弊社も、農林水産省系の補助金事業に依存している部分があるため、政策変更による影響を受けやすい脆弱性があります。

だからこそ、

  • 工場設計

  • エンジニアリング

  • HACCP認証支援

といった事業領域を拡張し、常に「自社を何屋さんと定義するか?」を問い続けています。


三品和広先生の言葉に学ぶ「事業立地」の本質

最後に、「週刊東洋経済」(2015年9月12日号)に寄稿された三品先生の記事を引用します。


■ 成功する企業の共通点

「事業立地」がよいということだ。仕事の仕方の工夫や製品開発ではなく、そもそも『何屋さんをやるか』の選び方が優れている。」


■ 事業立地の重層構造

「立地(誰に何を売るか)の上に、構え(どう届けるか)、製品(魅力づけ)、管理(品質・原価・納期)が乗っている」


■ 魅力的でない市場こそ、チャンス

「儲かるから参入する」よりも、「本当に困っている人を助けたい」人の方が、結果的にうまくいく。


おわりに

「売れる事業」は、社員の努力やテクニックの前に、“何屋さんか”の定義によって決まります。

ぜひ、あなたの会社も「事業立地」を見直すところから始めてみてください。


それではまた。ご覧いただきありがとうございました。

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