2025.10.10

「味」以外で差別化する戦略

こんにちは、北條です。

これからの食品業界において、大きな課題のひとつが

「味」以外でどう差別化するか?

というテーマです。

今日はこのテーマについて、今後の可能性を含めてお話したいと思います。


なぜ「味」だけでは差別化できなくなったのか?

理由は主に3つあります。

1. 技術の進歩で「そこそこ美味しい」が当たり前に

今やどの会社も、ある程度美味しい商品を作る技術を持っています。
そのため、市場に出回っている食品の多くが、

  • 「まあまあ美味しい」

  • 「普通に美味しい」

  • 「すごく美味しい」

という、ほんのわずかな差しかなくなってきました。


2. 「手軽さ」が重視される時代に

近年は、

「美味しいものを時間をかけて買いに行く」よりも、
「近場でそこそこ美味しいものを手軽に買う」

という消費行動が主流です。

つまり、味よりも利便性が優先される場面が増えているのです。


3. ネット通販の普及で「味」が伝わらない

ネット通販では試食ができないため、味そのものでは商品の魅力を伝えにくいという課題があります。

たとえば健康食品であれば、

  • 「膝に効く」

  • 「痩せる」

  • 「体に良い」

といった機能訴求が可能ですが、一般的な食品はそうはいきません。

このような背景から、味以外の差別化要素がますます重要になってきているのです。


差別化のカギは「絞り込み」と「理由づけ」

では、どうすれば味以外で差別化できるのか?

答えは、

特定の需要に“絞り込む”ことで、選ばれる“理由”を明確にすること

です。

たとえば、

  • SDGsに配慮した商品

  • ヴィーガン対応食品

  • 購入すると寄付が行われる商品

など、“誰か”に強く刺さる**「理由づけ」がある商品設計**がカギになります。


注目の差別化パターン:「防災食」

ここで一つ、具体的な差別化戦略の例をご紹介します。

それが、「防災食」です。

防災食マーケットは伸びている

防災食は、2011年と比較して2024年には市場規模が倍増しています。
今、非常に注目されている分野です。


従来の防災食の課題

これまでの防災食には、次のような課題がありました:

  • 賞味期限が長すぎて、気づけば期限切れ

  • 味がパサパサ、いざという時に食べたくない

これにより、備蓄したまま手をつけず、結局無駄になるという問題が多発していました。


解決策は「サブスク型の防災食」

最近では、この問題を解決するビジネスモデルが登場しています。

それが、「防災食のサブスクリプション型通販」です。

事例紹介:Bimistock(ビミストック)

東京都港区の有限会社オリエンタルデリが展開する「Bimistock」は、
3ヶ月ごとに防災食を届けるサブスクリプション型サービスです。

従来のような5年単位のサービスと違い、短いサイクルでの買い替えを促進しています。


防災食サブスクのメリット

顧客側のメリット

① 常に美味しく、フレッシュな状態で備蓄可能

定期的に新しい商品が届くため、古くなる前に食べて、新しいものに入れ替えられます。

② 賞味期限切れの心配が少ない

備蓄の鮮度が保たれ、「いざという時に食べられない」事態を回避できます。


メーカー側のメリット

① 継続的な売上が確保できる

1回売って終わりではなく、定期的なリピートによって安定した収益モデルが築けます。

② 長期保存不要、既存設備で生産可能

3ヶ月サイクルであれば、6〜10年の賞味期限は不要。
つまり、高価な設備がなくても、既存のレトルト設備で製造が可能です。

レトルト食品を作っているメーカーなら、新規投資なしで横展開が可能なモデルです。


防災食以外にも、切り口は無数にある

今回ご紹介した「防災食サブスク」は、“味以外”で差別化する戦略の一例です。

味だけで戦う時代ではなくなりつつある今、ぜひ自社の商品にも

「味以外で選ばれる理由はあるか?」

を問い直してみてください。


私もこの分野の動向は、今後も継続してウォッチしていこうと思います。

本日もお読みいただき、ありがとうございました。

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