2025.10.15

『低粗利 x 大量生産』→今後危険になる理由

こんにちは、北條です。

最近、工場建設に関するご相談が増えてきています。

そのなかでも特に多く見られるのが、

「低粗利 × 大量生産」型のビジネスモデルを採用している企業の資金繰り悪化

というケースです。

「今すぐ工場を建て替える予定はない」という方も多いかと思いますが、
低価格の商品を大量に販売するモデルを採っている企業は、
将来を見据えるうえでも、ぜひ今回の内容を読んでみてください。


1990年代の成功モデルが今、苦しみ始めている

かつて大量生産で成功を収めた企業が、今、苦境に立たされています。

特に、築30年以上の老朽化した工場の建て替えを検討している企業からの相談が増加しています。

建て替えを検討する理由としては、

  • 建物の老朽化

  • 建物起因による異物混入のリスク

などがありますが、実際には建て替えに踏み切れない企業が多いのが現実です。


建て替えが難しくなる2つの理由

① 設備投資コストの増大

売上が大きい企業ほど、生産量も多く、
結果として必要な工場の規模や設備も大きくなります。

しかし近年は、

  • 建築費の高騰

  • 設備費用の上昇

により、大規模な生産体制を構築するための初期投資が膨大になっているのです。


② 低粗利ビジネスとの相性の悪さ

もう一つの問題は、低粗利のビジネスモデルです。

たとえば、

「先代が建てた工場の減価償却が終わっているので、低単価でも利益が出ている」

という状態に安心し、低価格・大量生産を続けている企業も多いです。

しかし、これでは新しい投資に耐えられない体質になってしまいます。


実際の事例:建て替えられない現実

ある会社では、大手企業からの受注が年商の25%を占めており
その生産ラインを切ることができないため、
工場リニューアルに伴ってそのライン用の設備も導入せざるを得ない状況に。

結果として、設備投資額が大きく膨らみ、
利益回収の見込みも立たず、建て替えを断念する事態となりました。

つまり、

目先の売上を追いかけて低単価の仕事を続けていると、
将来的に大きな制約を受けることになる

ということです。


解決への第一歩:「償却ゼロ計算」の導入

根本的な解決策ではないかもしれませんが、
私から一つ提案させていただくとすれば、

「減価償却ゼロで利益を考え、将来の建物・設備更新を前提にした事業計画を立てること」

です。

今すぐに工場を建て替えなくても構いません。
しかし、将来的に必ず設備投資は必要になるという前提で、計画を立てておくべきです。


参考:工場建設に必要なコスト感

これはあくまで私見ですが、
たとえば御社の売上が10億円あると仮定し、完全新築を前提とした場合:

  • 建物:6億円

  • 設備:4億円

合計で売上と同等程度の投資が必要になるケースが多いです。

※商品の温度帯や排水量によって設備規模は大きく異なりますので、あくまで目安としてご覧ください。


毎年の償却負担目安(例)

  • 建物の償却:31年 → 約2,200万円/年

  • 設備の償却:10年 → 約3,000万円/年

この場合、毎年5,000万円のキャッシュフロー的負担が発生します。

つまり、

営業利益が5,000万円出る体質でなければ、将来の建て替えに耐えられない

ということになります。


「低粗利 × 大量生産」の会社が今から備えるべきこと

もし、御社が現在このビジネスモデルを採っているのであれば、
今のうちから将来の設備更新や工場建て替えを前提に、財務設計を見直すことを強くおすすめします。

すぐには変えられなくても、
「いつかその日が来る」ことを想定して準備をしておけば、
設備が限界を迎える頃に慌てず対応ができます。


まとめ:未来に備える視点を持つ

今回の内容が、御社の未来を考えるきっかけになりましたら幸いです。

「今は大丈夫」と思える状態ほど、将来への備えが必要です。

本日もお読みいただきありがとうございました。

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