こんにちは、北條です。
近年、欧米を中心に**プラントベース食品(植物性代替食品)**の市場が急拡大しています。Beyond Meat や Oatly といった企業が牽引し、代替肉・代替乳・代替チーズはグローバルで数兆円規模に成長しました。
一方、日本ではその波が意外なほど小さいのが現状です。ただし、まったく伸びていないわけではなく、この10年で約5倍に拡大しているデータもあります。それでも、「導入しても売れない」「定着しない」という声が食品メーカーから多く聞こえてきます。
なぜ日本ではプラントフーズが広がらないのか。技術や情報の遅れではなく、構造的な壁があると考えています。ここでは、その背景を整理し、打開へのヒントを探っていきます。
欧米での拡大は、
気候変動への危機感
動物倫理
サステナブルな選択
といった思想的モチベーションが支えになってきました。多少高くても食感が劣っても「選ぶ理由」が明確に存在します。
一方、日本では「環境のために代替肉を選ぶ」という行動は少数派。多くの消費者は味・価格・健康の3点バランスで判断します。
いくら地球にやさしくても、肉より高くて味が劣ると感じられれば手に取られにくい。特に物価上昇局面では、価格がより強い決定要因になります。つまり、日本市場では「思想」ではなく実利が先行します。
日本には古くから植物性食品の厚い基盤があります。
豆腐、納豆、湯葉、がんも、こんにゃく、精進料理——どれも動物性を使わず、ヘルシーで、長い歴史の中で家庭に受け入れられてきました。
この基盤は強みである一方で、欧米型の「肉/乳に似せる」代替品を**“あえて選ぶ理由が弱い”**状況も生みます。
「植物性にしたいなら豆腐でいい」
「なぜ肉に似せる必要があるの?」
という声は特にシニア層で根強い印象です。つまり、日本では代替という発想自体に懐疑的になりやすい。元来、豆類を日常的に摂る食文化があることも、代替食品の浸透を鈍らせる一因と感じます。
日本では「植物由来=ポジティブ」よりも、
人工的/フェイクに見える
加工度が高そう
添加物が多そう
といった感情的なネガティブが先に立つことがあります。
「肉のように見える」「チーズのような食感」といった模倣設計は、技術的評価が高くても感情面で受け入れられにくい。コンビニ惣菜や冷凍食品でも、**“なんとなく不自然”**という印象だけでリピートに繋がらないケースが起きます。
加えて、味を整えるための添加物イメージや、エコ文脈のない売場では**“割高・不自然・そこまでおいしくない”**という受け止めになりやすく、定着を阻害します。
日本の売場では、プラントベースが
ヘルシー/新しい/ダイエット向けといった訴求に留まりがちです。それだけでは動機づけが弱い。
欧米ではヴィーガン・ベジタリアンだけでなく**フレキシタリアン(時々菜食)**に向け、
罪悪感のない選択
未来への投資
といった強いストーリーが共有されています。日本では「新商品」として棚に置かれるだけで、“なぜ今これを選ぶべきか”が語られていないことが多い。これが**『気になるけど買わない』**を生んでいます。言い換えれば、物語の設計が弱いのです。
上記を踏まえ、日本市場でプラントフーズを伸ばすための方向性です。
植物だからこそ出せる味
五感で楽しむ“精進モダン”
肉・乳の“コピー”ではなく、新しい食の体験価値を提示
例)「週に一度、身体と地球にやさしいごちそう」
“正しさ”ではなく、楽しさ・ご褒美・気持ちよさに訴えるメッセージ
例)大豆ミートを“肉の代替”としてではなく、まったく新しい豆料理の再発明へ
似せるほど比較されます。比較軸から降りる戦略が有効
参入障壁は高い一方、上手くいけば新しいブランド資産を築けます。
国内市場はまだ発展途上ですが、
消費者の健康志向・環境意識の高まり
インバウンド需要の増加
といった追い風も存在。今こそ差別化の好機です。世界的潮流も学びつつ、日本市場に合った**“独立カテゴリ×感情訴求×非模倣”**の戦略づくりをおすすめします。
ぜひ今回の整理を、貴社の商品開発・マーケティング戦略にお役立てください。
北條
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