こんにちは。
アカネサス代表の北條竜太郎です。
本稿は、「てんしばオクトーバーフェスト」での観察をもとに
現代の消費行動を読み解くシリーズの**ビール編・第3回(最終回)**です。
これまでの2回では、
「納得と記憶」「並ぶという体験の価値」についてお話ししました。
今回はそこからもう一歩踏み込み、
“贅沢”という言葉の意味そのものがどう変化しているのかを考えてみたいと思います。
ゴールデンウィークの午後。
大阪・天王寺公園の広場では、強い日差しのなか、汗をぬぐいながら
ビールの列に並ぶ人たちの姿がありました。
手にしていたのは、1杯1,600円のクラフトビール。
価格だけを見れば「高い」と感じるかもしれません。
けれど、その場にいた人たちは、それを“贅沢”とは思っていなかったはずです。
いま、「贅沢」という言葉の意味が、静かに、しかし確実に変わりつつあります。
かつて、贅沢とはこう定義できました。
限られた人だけが入れる空間
高価で希少なモノを所有すること
つまり、**“閉じられた非日常”としての価値です。
しかし、現代の消費者が求めているのはまったく逆の体験。
それは、「誰もが入れる空間で、少しだけ背伸びできること」**です。
私はこれを、“開かれた非日常”と呼びたいと思います。
公園、広場、駅前、屋上、商業施設の一角など
招待状もドレスコードもいらない
「来てよいこと」が保証されている空間
→ 例:てんしば、代々木公園、ローカル駅ナカマルシェ
こうした場所は、消費者にとって“近づいていい空気”を生み出します。
日常とは異なる時間帯・音・香り・装飾
仮設テントやBGM、スタッフの装いが“非日常”を演出
ポイントは高級感ではなく「リラックス感+よそ行き感」
→ 例:木製のテーブル、音楽はジャズではなくポップ、でも“特別な日”を感じる構成。
普段より高くても、「せっかくだから」と思える
高額ではなく“意味の通る価格”を作る
→ 例:1,600円のクラフトビール、700円の焼きたてパン、400円の一口プリン。
価格は「割に合うか」ではなく、**“その瞬間が意味を持つか”**で判断されています。
会話、笑い声、列、周囲のリアクション
「自分と同じように楽しむ人」がいることで安心する
他者の存在が、体験の正当性を支えている
→ 例:並ぶ、同じグラスを持つ、写真を撮る人を目にする。
他者の存在が「これでいい」と感じさせる構造です。
SNS投稿、写真、限定メニュー表などが“物語の証拠”に
「あの日、誰と、どこで、何を飲んだか」を語れる情報のかたまり
→ 例:映えるビジュアル、限定マーク、スタンプカードなど。
記憶が“消費の再生産”を生みます。
この5つの要素を意識すれば、
どんな商品でも“日常価格から逸脱した価値”を
納得感をもって伝えられる設計が可能になります。
食品メーカーの現場でも、
「価格ではなく記憶を届ける」商品体験が求められているように感じます。
アカネサスでは、こうした体験設計に長けた
イベント企画会社や空間演出パートナーとの連携も可能です。
“感覚の文脈”を整えたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
同じ商品でも、どこで・どんな空間で提供されるかによって、
その「価値の見え方」は大きく変わります。
1杯1,600円のビールは、単なる飲料ではありません。
「気持ちよく滞在できる場所で、誰かと共有できる時間」を含んだ体験です。
人は“高いか安いか”ではなく、
**「今の空気に合っているか」**で消費を判断しています。
この“文脈の納得感”を丁寧に設計できるかどうか。
そこに、価格以上の満足を生む鍵があると考えています。
社会学者ミシェル・ド・セルトーが述べたように、
人は“使い方”を通じて、日常に独自の意味を生み出します。
商品や空間も同じ。
どう使われ、どう語られるかまで想定することで、
それは単なるモノから「記憶に残る体験」へと変わります。
アカネサスは、そうした体験文脈の設計にこそ、
これからの商品・プロジェクトづくりの本質があると考えています。
それではまた。
株式会社アカネサス
北條竜太郎
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