2025.12.31

なぜ、日本の食品メーカーは利益率が低い?【スケーラブル戦略の限界】

こんにちは。
アカネサス代表の北條竜太郎です。

今回から3回にわたり、
「なぜ日本の食品メーカーは海外と比べて利益が出にくいのか?」
というテーマで考察していきます。

私は中小企業の支援を通じて、
日々の現場で「儲からなさの構造」を目の当たりにしています。
本シリーズではその背景をデータと実例から整理し、
これからの食品メーカーが取り得る戦略を検討していきます。


構造的に“儲からない”日本の食品メーカー

日本M&Aセンターが2023年11月に発表したレポート(※)によれば、
日本の食品メーカーの営業利益率は上場企業であっても平均3.6%程度
海外の大手食品メーカーに比べて、著しく低い水準にあります。

※出典:日本M&Aセンター「食品業界M&Aの現状」

これは中小企業だけの課題ではありません。

企業名 営業利益率
明治ホールディングス 8.0%
キッコーマン 7.4%
ネスレ(スイス) 17.1%
ダノン(フランス) 12.2%

国内大手でさえ、海外勢と比べて大きく見劣りしています。


なぜ同じ“スケール”でここまで差がつくのか?

理由は明確です。
**「スケールしてもg単価が落ちない設計」**を海外大手は持っているのに対し、
日本企業の多くは、スケールによって単価が下がる構造に陥っています。

たとえばネスレの「キットカット」は、
世界各国で“プレミアムチョコレート”として高いg単価を維持しています。
一方、日本のブルボン製品は「コスパ型」が中心で、
キットカットの半分〜3分の1の単価で販売されることも珍しくありません。

アイス市場でも同様です。
ハーゲンダッツはどの国でも“高級アイス”のポジションを守っていますが、
国内メーカーの量販アイスは値崩れしやすく、単価維持が困難です。

ブランドが価格を守る構造を持つかどうか。
この設計力の差が、収益性の差そのものになっています。


スケーラブル戦略は万能ではない

海外大手が高い利益率を維持できるのは、
「スケールしても粗利が維持できる構造」を持っているからです。

海外大手に共通する仕組み

  • プレミアムブランドの確立

  • EC直販・専用店舗など高粗利チャネルの確保

  • 自社開発・特許による製品差別化

  • グローバル市場への展開によるリスク分散

一方、日本の食品メーカーの多くは真逆の構造にあります。

日本メーカーに多い課題

  • OEM比率が高く価格決定権を持てない

  • 流通に主導権を握られ、値上げが通らない

  • 設備投資負担が利益を圧迫

  • 販路が量販店中心で、ブランド単価を維持できない

そして、最も本質的な問題は――
「ブランドを守る」という発想の希薄さです。


スケールが“並商品化”を生む悪循環

日本企業は「スケールしてコストを下げる」発想に偏りがちです。
しかし、その裏側で次のような悪循環が起きています。

  • スケールするほどブランドが“並商品化”する

  • 売価が崩れ、価格競争に巻き込まれる

  • 商品が“選ばれる理由”を失う

結果として、「スケール=利益向上」とは限らない構造が生まれています。


中小がこれを真似するとどうなるか?

大企業でさえ設計できていない「収益性あるスケーラブル構造」を、
中小企業がそのまま模倣すれば、当然苦しくなります。

想定される結果

  • 売上は伸びても粗利が増えない

  • 設備投資だけが膨らむ

  • OEM先・流通に主導権を奪われる

  • ブランドが育たずコモディティ化する

結果として、「売っても売っても利益が残らない」状態に陥るのです。


次回予告: “あえて小さく”が武器になる

次回は、こうした現状を踏まえたうえで、
中小食品メーカーがとるべき**「非スケーラブル戦略」**の意義を掘り下げます。

あえて手間をかけ、あえて狭く、あえて個性的に勝つ。

「小さいからこそできる戦い方」がどのように収益化へつながるのか。
実例を交えてお話しします。

お気軽にお問い合わせ、ご相談ください。