2026.01.02

【あえて小さくが武器になる】“非スケーラブル戦略”とは?

こんにちは。
アカネサス代表の北條竜太郎です。

前回の第1回では、
日本の食品メーカーがスケーラブル戦略(大量生産・効率化)に偏るあまり、g単価の低下やブランドの劣化を招いているという構造的問題を取り上げました。

今回はそこから一歩踏み込み、
中小企業にとって**「スケールしないこと」こそが優位性になる可能性**について考えます。

私自身が家業・茜丸(昭和15年創業)を再建した際の経験も交えながら、
「非スケーラブル戦略」の具体像を掘り下げていきます。


「今さら、あんこで勝負してどうするんだ」

茜丸の再建を始めた当初、
社内で実際に出た言葉です。

当時は業務用比率が高く、
kg単価と粗利率だけが評価軸という世界。
味や関係性は数字で測れず、価格競争がすべてでした。

しかし私は、その“価格しかない世界”に、
使いやすさ・関係性といった実用価値を持ち込むことにしました。


kg単価の呪縛から抜ける方法

当時の茜丸では、ギフト需要が落ち込む中、
「餡」を再定義しました。

  • ベーカリーや和菓子職人向けにレシピ提案を内製化

  • 問屋登録がなくても1kgから即納できる小回り重視の体制

  • 「すぐ届く」「すぐ使える」=便益の設計

  • ラムネあん・むらさきいもあんなど、季節限定50種の特殊餡を展開

その結果、ただの“使いやすい餡”から“選ばれる餡”へと変化しました。
同業他社と比べても、kg単価で約1.5倍の価格で販売できる商品群が生まれ、
昨今の原価高騰下でも一定の収益性を維持できています。


ラグジュアリーではなく、なぜプレミアムか?

「うちも高級路線でいきたい」という声をよく聞きます。
しかしラグジュアリー戦略は、文化性・象徴性・美術性に投資できる体力があってこそ成立する戦略です。

中小が目指すべきは、
“選ばれる理由”を丁寧に設計するプレミアム路線です。

食品業界におけるブランド戦略の3分類

区分 特徴
マス 品質・価格・機能で差別化
プレミアム 付加価値・体験・ストーリー・限定性で差別化
ラグジュアリー 文化性・象徴性・希少性・美術性で差別化

「日常の中の特別」として選ばれる商品を意図して設計する。
それこそが、非スケーラブル戦略の本質です。


スケーラブルではないが、勝てる設計

日本政策投資銀行(DBJ)が2023年に実施した
「地域発食品メーカーのブランド戦略調査」では、
プレミアムブランドを意図的に設計し、収益性を高めた企業が紹介されています。

DBJレポートで紹介された企業例

  • セゾンファクトリー
     日常品のジャムを高価格帯へ転換。瓶・色・空間設計まで徹底。

  • スタイルブレッド
     冷凍パン×業務用という未開拓市場でプレミアム化を実現。

  • たねや/クラブハリエ
     和洋菓子ブランドを再構築し、販売拠点を“体験型”に転換。

いずれも共通しているのは、
「量産せず、価格を守る設計」に成功していることです。


小さくても、戦える

中小企業の強みは、
「大きくできないこと」ではなく、
**「大きくしなくていいこと」**にあります。

  • 顧客との距離が近い

  • 提案力が伝わりやすい

  • 商品や接点を柔軟に設計できる

だからこそ、
“売れる”よりも“選ばれる”戦略が実現できるのです。


次回予告|スローフードに学ぶ「利益のある小ささ」

次回は、イタリアのスローフード運動や中小企業群の事例をもとに、
“規模を追わずに利益を出す”という別の選択肢を探ります。

「作る」「伝える」「残る」をつなげる
小さくても利益を出す仕組みづくりのヒントをお届けします。

それではまた。
北條

お気軽にお問い合わせ、ご相談ください。