2026.09.30

【食品EC対談1】なぜ、多くの食品メーカーのECは伸び悩むのか【全3回】

こんにちは。
アカネサス代表の北條です。

今回から3回にわたり、食品ECについてお届けします。

最近、食品メーカーの経営者の方々から「ECが伸び悩んでいる」という相談を受ける機会が非常に増えています。

「補助金で設備投資はできた」

「製造体制は整った」

「でも、売る力がない」

設備や製造体制が整っても、販売が伸びなければ投資は回収できません。

そこで今回は、私自身が信頼を寄せている株式会社ジャパンフードカンパニー代表取締役であり、食品EC特化型コンサルタントの南口龍哉氏をお招きし、対談形式でお届けします。

南口氏は、EC市場がまだ黎明期だった14年前から食品EC支援に携わり、10社以上の年商1億円突破を支援してきた実績を持つ専門家です。

現場を知り尽くした視点から、食品ECが陥りやすい落とし穴と、本当に投資すべきポイントについて伺いました。


食品EC市場は今も成長しているのか

北條:

最近、多くの地方食品メーカーの経営者の方とお話しする中で、「EC事業がどうにも伸び悩んでいる」という声を本当によく耳にします。

人口減少や原材料費の高騰を受けて、ECを事業の柱にしたいという意欲はあるものの、「何をどう改善すればいいのか分からない」という状況です。

南口:

その悩みは非常によく聞きます。

コロナ禍を経て実店舗への来客が戻る中、「なんとなくEC」を続けてしまい、結果として成長が止まっているケースは少なくありません。

北條:

そもそも食品EC市場は今も成長しているのでしょうか。

南口:

はい。市場は今も成長しています。

家計調査などを見ても、食品EC市場は前年比110%前後で成長を続けています。

「EC市場はもう伸びていない」というのは感覚的な印象であり、実際のデータを見ると成長市場であることが分かります。

北條:

まだ110%も伸びているのですね。

南口:

ここで重要なのは、市場全体が110%で成長しているということは、「前年比110%でようやく平均」ということです。

もし自社ECの成長率がそれを下回っているのであれば、市場成長に置いていかれていると考えるべきです。

だからこそ、「今が一番良いタイミング」と考え、構造改革に取り組む必要があります。


多くの企業が陥る「間違った努力」

北條:

ECが伸び悩む企業にはどのような共通点がありますか。

南口:

一番多いのは、投資の打ちどころがズレているケースです。

北條:

例えばどのようなものでしょうか。

南口:

特に多いのが次の2つです。

① 流行への過剰反応

戦略がないままInstagramやTikTokなどのSNS運用に時間をかけてしまうケースです。

② 見た目への過剰投資

ECサイトのデザインだけを綺麗に整え、肝心の商品設計や販売設計が後回しになっているケースです。

北條:

確かに、「自分たちが見せたいもの」を優先し、「お客様がなぜここで買うのか」という視点が抜けているケースはよく見かけます。

南口:

その通りです。

SNSもデザインも大切ですが、それだけでは売上は伸びません。

まずは「誰に、何を、なぜ買ってもらうのか」という土台を作ることが重要です。


売上が停滞する企業の構造的問題

南口:

うまくいっていない企業には、共通する構造的な問題があります。

特に上位5項目は、マーケティング以前の経営課題と言えます。

  1. 経営者が本気で関わっていない
  2. ECを自動販売機だと思っている
  3. 事業責任者が不在、または施策をやり切れていない
  4. EC特有のビジネスモデルを理解していない
  5. 後投資型事業であることを理解していない
  6. 自社事情を優先しすぎている
  7. 自社で購入する理由が明確でない
  8. 新規顧客が集まらない
  9. リピート施策が弱い
  10. そもそも利益が出ない事業構造になっている

北條:

「経営者が本気で関わっていない」というのは確かによくあります。

南口:

「売上が上がったら専任担当を置こう」という考え方をされる企業も多いですが、実際は逆です。

事業化を目指すのであれば、最初から責任者を置き、正しい方向性で運営する必要があります。


「後投資型事業」を理解できていない企業が多い

南口:

相談の中でも特に多いのが、次の2つです。

① 販促投資をしていない

ECはショップを作って終わりではありません。

集客のための投資を行って初めて動き始める「後投資型事業」です。

しかし、その理解がないまま運営されているケースが非常に多いです。

② 広告をやめてしまった

過去に広告を出したものの、「効果が悪かった」と判断して広告投資をやめてしまうケースです。

北條:

①は非常によく見ます。

実店舗なら自然な通行量がありますが、ECサイトは開設しただけでは誰も来ませんからね。

②についてはどうでしょうか。

南口:

もちろん、効果の悪い広告を続ける必要はありません。

ただ、多くの企業が評価軸を間違えています。

食品ECは一般的に、新規顧客獲得では利益が出ません。

新規顧客を獲得し、その後のリピート購入で利益を回収するモデルです。

それにもかかわらず、「広告費に対する初回売上」だけを見て、「広告は失敗だった」と判断してしまう企業が非常に多いのです。

北條:

なるほど。

実店舗はオープン前に大きな投資を行いますが、ECは開設コストが比較的低い分、オープン後の販促投資が必要になるということですね。

南口:

その通りです。

実際には継続すべき広告施策だったにもかかわらず、評価方法を誤ったためにやめてしまい、成長機会を失っている企業を何度も見てきました。

投資意欲はあったのに、判断基準を間違えたことで成果につながらなかった。

非常にもったいないケースです。


まとめ

今回の対談では、食品ECが伸び悩む背景として、

  • 市場は今も成長している
  • SNSやデザインへの過剰投資が起きている
  • 経営者の関与不足が多い
  • ECは後投資型事業である
  • 広告の評価方法を間違えている

といった構造的な課題についてお話しいただきました。

「ECが伸びない」のではなく、「伸びない構造になっている」ケースが少なくありません。


次回予告

次回は、

「年商1億円を突破する3つのSTEP(前編)」

をテーマにお届けします。

南口氏が実際に10社以上を年商1億円突破へ導いてきた具体的な方法論を解説いただきます。

次回の内容

  • 売上の方程式
  • 売れる1商品の作り方
  • 投資回収モデルの設計
  • CPOの相場感

食品ECを本気で伸ばしたい方は、ぜひ次回もご覧ください。

── 北條竜太郎

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