こんにちは、北條です。
突然ですが、質問です。
経営者として一番大事な役割とは、何だと思いますか?
今回は、この問いの答えにもつながる、経営・マーケティングの本質的で重要なお話をお届けします。
神戸大学の経営学部(およびMBA)に、三品和広先生という経営戦略論の第一人者がいらっしゃいます。
書籍も出されており、ご存じの方も多いかもしれません。
この方は、ハーバード・ビジネス・スクールで講演した唯一の日本人でもあります。
実は私も8年ほど前、神戸大学MBAを受験したことがありました。
筆記試験には合格したものの、面接で不合格に。
そして、その面接官が三品先生だったのです。
名乗られませんでしたが、著書やお顔を知っていたのですぐに気付きました。
面接では「あなた変わった人だね」と一言…。
結果はご想像の通りですが、いつか再チャレンジしたいと思っています。
さて本題に戻ります。
三品先生は、「業績が良い事業の事例研究」を行い、著書でもその分析結果について触れています。
1805社・約3000事業を分析し、業績が伸びている事業には共通のパターンがあることを導き出されました。
その中で得られた結論のひとつが、
「事業コンセプトが悪いと、いくら頑張っても成果は出ない」
というものです。
商売には必ず「コンセプト(事業の定義)」があります。
それはつまり、
「誰に、何を売るのか?」
ということです。
たとえば、宝のない地面をどれだけ掘っても、何も出てきませんよね。
同じように、どれだけ優秀な経営者やスタッフ、多額の資金を投入しても、「そもそも売れない商品」であれば成果は出ません。
まさに、「今さら炭鉱を掘っても儲からない」のと同じです。
先日、北海道の芦別という町に仕事で行ってきました。
かつて炭鉱で栄えたこの町も、今では人口約8,000人の小規模な街となっています。
もし、今この旧炭鉱に優秀な経営者とチームが乗り込んでも、良い成果は得られないでしょう。
現代で“掘るべき”なのは、シェールガスやメタンハイドレートなのです。
事業も同じで、成功の鍵は「どの市場で勝負するか?」にあります。
業績が悪いと、社員のせいにして営業部門を詰める経営者もいます。
しかし、それはまったくの見当違いです。
売れる事業を作れていない経営者自身に、最大の責任があります。
企業の組織は「経営層」「判断層」「実務層」の3層に分かれます。
その中で、経営層が果たすべき最大の役割とは、
「自社の事業領域をどう定義するか?」
つまり、「どこで勝負するか?」を決めることです。
ここが売上に最も大きなインパクトを与えるのです。
さて、では現在苦戦している食品メーカーはどうすれば良いのでしょうか?
食品メーカーは設備投資が前提のため、業種の大転換は現実的ではありません。
ではどうするのか?
答えは、
「同じ商品でも、売り先(=誰に売るか)を変えること」
です。
かまぼこ業界は、現在、全体的に業績が低迷しています。
しかし、その中でも好調な企業があります。
それは、かまぼこを「フィッシュプロテイン」=プロテインフードとして見せ方を変えた企業です。
低脂肪・高タンパク・栄養豊富という特性を打ち出し、アスリートやトレーニング市場にリブランディングしたのです。
まさに、
「誰に、何を、どのように売るか」
を再定義し直した成功例といえるでしょう。
社員にハッパをかける前に、経営者が「定義」を変えるべきです。
これは、サイゼリヤ創業者・正垣泰彦さんも同様のことをおっしゃっています。
「売上が伸びないのは立地などの要因であり、店主の責任ではない」と教育している
という姿勢は、まさに「事業立地」の重要性を物語っています。
弊社も、農林水産省系の補助金事業に依存している部分があるため、政策変更による影響を受けやすい脆弱性があります。
だからこそ、
工場設計
エンジニアリング
HACCP認証支援
といった事業領域を拡張し、常に「自社を何屋さんと定義するか?」を問い続けています。
最後に、「週刊東洋経済」(2015年9月12日号)に寄稿された三品先生の記事を引用します。
「事業立地」がよいということだ。仕事の仕方の工夫や製品開発ではなく、そもそも『何屋さんをやるか』の選び方が優れている。」
「立地(誰に何を売るか)の上に、構え(どう届けるか)、製品(魅力づけ)、管理(品質・原価・納期)が乗っている」
「儲かるから参入する」よりも、「本当に困っている人を助けたい」人の方が、結果的にうまくいく。
「売れる事業」は、社員の努力やテクニックの前に、“何屋さんか”の定義によって決まります。
ぜひ、あなたの会社も「事業立地」を見直すところから始めてみてください。
それではまた。ご覧いただきありがとうございました。
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