こんにちは。
アカネサス代表の北條です。
本記事は、「読書によって考える力を鍛える」シリーズ第2回です。
全3回を通じて、抽象と具体を往復しながら、
ビジネスや制度設計、組織づくりにおいて本質的に必要な
“読み解く力”
について考えていきます。
第1回:経営本では身につかない──構造と変化の起点を読む力
第2回:ズレから始まる設計──“不可能性の時代”をどう扱うか(本記事)
第3回:虚構の時代の果て──それでも語る理由
正直に申し上げて、一般的な経営書やビジネス書の多くには懐疑的です。
過去事例をもとにした曖昧な帰納、
現場で再現できない抽象論の繰り返し。
本質的な議論に至っている書籍は、ほとんど見かけません。
むしろ、
Excelの操作方法
プレゼン資料の構成法
といった単機能の実務書のほうが、よほど役に立ちます。
実務において意味を持つのは、
**「再現性のある知識」**だけだと考えています。
だからこそ私は、
社会の深層にある構造そのものを対象化する知性にこそ、
学ぶ価値があると考えています。
どれだけ段取りを詰めても、現場はズレます。
制度を活用し、設備投資の設計まで整え、稟議も通った。
そのはずが、最終的にプロジェクトが宙に浮くことがあります。
理由はさまざまですが、本質的には
人の迷い
文化的な引っかかり
責任構造の不透明さ
といった、言語化されていない力学が背景にあります。
制度・資金・計画の三点セットが揃っても、
それが実行されるとは限らない。
現場で起きるのは、常に“ズレ”です。
そして私は、このズレこそが
設計や意思決定の入口になると考えています。
この「ズレ」をどう理解するか。
その手がかりとなるのが、
社会学者・大澤真幸先生の
📘 『不可能性の時代』(岩波新書)
です。
「かつての人は、選択肢がなかったから動けなかった。
現代の人は、選択肢が多すぎて動けない。」
この逆説は、制度設計や事業推進、組織運営に深く通じています。
補助金や設備投資のように、
「やることは整っている」ように見える現場でも、
最終判断ができないケースは多い。
“選べる状態”が生み出すのは、自由というより
動けなさなのです。
大澤先生はこう書いています。
「可能性の拡大は、選択の困難を高め、
結果として行動の不可能性を招く。」
やれることが増えた社会では、
決めること自体が困難になる。
これは抽象論ではなく、
現場で日々起きている具体的な現象です。
私は大学院時代、大澤先生の講義を受けた“不肖の弟子”の一人です。
当時から、「資本」や「組織運営」といった現実的テーマを、
〈不可能性〉という枠組みで読み直したいと考えていました。
ビジネスの世界に飛び込み、
制度や利害と格闘する日々のなかで、
再び抽象の言葉を手に取るようになったのは、
「目の前の問題の奥に、構造的な読みが必要だ」
と感じたからです。
いつか「制度の設計と倫理」について
大澤先生と正面から議論したい。
その思いが、私を言葉の世界に引き戻し続けています。
先を読むことだけが設計ではありません。
むしろ、“読み通りにいかない”ことを前提にしたとき、
初めて設計や判断は意味を持ちます。
どこがズレるのか
なぜズレるのか
そのズレは何に根ざしているのか
その履歴を記録し、パターン化し、
次に活かせる形に落とし込む。
それが応用可能な判断力につながります。
ズレの履歴を言語化できるようになったとき、
人は状況を読む力を得るのです。
あなたが最後に感じた「ズレ」はどこにありましたか?
それは、どんな関係や構造とつながっていましたか?
その履歴を、どのように記録し、
今後にどう活かしていますか?
ズレを“誤差”として処理するのではなく、
“素材”として扱えるようになったとき、
設計や判断の質は一段階変わります。
一度限りの現場で、どう判断し、どう動かすのか。
それを支えるのは、数字や制度だけではありません。
“語り”や“物語”の力が、現実を動かすことがあります。
次回は、
「虚構=再現できない状況を動かす技術」
としての言葉の力について考えます。
語ること、語られることが、
どのように構造を動かすのか──
ぜひ続けてお読みください。
── 北條竜太郎
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