こんにちは、北條です。
最近、工場建設に関するご相談を多くいただくようになりました。
背景にはさまざまな事情がありますが、特に目立つのが以下のような理由です。
「そろそろ会社の引き継ぎがあるから、工場を建て替えたい」
といった声が非常に増えています。
帝国データバンクの調査によると、社長の平均年齢は60.4歳。
50歳以上が8割を占めるとも言われており、次世代へのバトンタッチが本格化してきています。
実際にご相談いただく方の多くは、
40代の後継社長
後継者候補である専務・常務クラス
といった、次の世代を担う方々です。
それ以外にも、工場を新たに建てたいというニーズには、以下のような理由があります。
かつては、虫の混入などの不備があっても、問題として表面化することは少なかったかもしれません。
しかし、現在ではネットの普及により、こうした問題がすぐに拡散され、企業にとって致命的なダメージとなります。
HACCPなどの導入も進み、バイヤーの衛生面に対する目も厳しくなっています。
食品工場では、
すごく暑い
すごく寒い
といった過酷な環境が少なくありません。
このような状況を少しでも改善し、人手不足への対策を講じたいと考える企業も増えています。
これまで高齢の経営者が見過ごしていた問題も、若い後継者世代から見ると「これはまずい」と感じるケースが多く、工場の建て替え検討に至るわけです。
ところが、いざ建て替えようとした際に、断念せざるを得ないケースも多発しています。
その大きな理由が——
ここ数年、建築費用は急激に高騰しています。
下記の記事にもあるように、右肩上がりで価格が上昇しており、止まる気配がありません。
特に食品メーカーの工場ではこの傾向が顕著です。
例えば、温度管理が必要な水産工場などは、建築費が非常に高額になります。
和菓子のように常温製造が可能な工場でも、坪単価130万円以上になることが一般的です。
さらに、設備も高騰しています。
トンネルフリーザーなどは、以前は5,000〜7,000万円だったのが、現在は1億円超えとなっています。
この問題が特に深刻なのは、小規模企業や利益率の低い企業です。
食品工場では、規模の大小にかかわらず必要な設備があります。
例えば、
ボイラー
キュービクル
前室
といった設備は、規模が小さくても省略できません。
(👉 HACCPとゾーニングの解説)
そのため、売上が小さい企業ほど、工場建設費が売上に占める割合が大きくなり、大きな負担となります。
最近の実例としては、
年商3億円の水産加工会社:建設費11億円
年商4億円の惣菜メーカー:建設費8億円
といったケースもあります。
しかも、これらは土地代を含まない金額です。
「銀行から借り入れすれば良いのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、売上が小さい企業では、それも難しい場合があります。
たとえば、売上5億円の会社が10億円を借りて建設すると仮定しましょう。
利息1%、15年返済の場合:年間返済約7,100万円
営業利益率5%なら利益は2,500万円
このように、返済額が利益を大きく上回るため、銀行側も融資に慎重にならざるを得ません。
今回は、まず
工場建築費が大きく高騰しているという現実
についてお伝えしました。
「しばらく様子を見れば、建築費は下がるのでは?」と期待されている方も多いかもしれません。
しかし、残念ながらその可能性は極めて低いのが実情です。
次回の記事では、
なぜ建築費がここまで高騰しているのか?
今後、建築費は本当に下がらないのか?
といった背景や理由について、もう少し深掘りしてお届けします。
それでは、また。
お気軽にお問い合わせ、ご相談ください。