2025.04.18

【まさかの】工場を建て替えできないケース

こんにちは、北條です。

最近、工場建設に関するご相談を多くいただくようになりました。
背景にはさまざまな事情がありますが、特に目立つのが以下のような理由です。


後継のタイミングで建て替えを検討

「そろそろ会社の引き継ぎがあるから、工場を建て替えたい」
といった声が非常に増えています。

帝国データバンクの調査によると、社長の平均年齢は60.4歳。
50歳以上が8割を占めるとも言われており、次世代へのバトンタッチが本格化してきています。

実際にご相談いただく方の多くは、

  • 40代の後継社長

  • 後継者候補である専務・常務クラス

といった、次の世代を担う方々です。


建て替えニーズの裏にある3つの理由

それ以外にも、工場を新たに建てたいというニーズには、以下のような理由があります。

1. 品質への意識の高まり

かつては、虫の混入などの不備があっても、問題として表面化することは少なかったかもしれません。
しかし、現在ではネットの普及により、こうした問題がすぐに拡散され、企業にとって致命的なダメージとなります。

HACCPなどの導入も進み、バイヤーの衛生面に対する目も厳しくなっています。

2. 労働環境の改善と人材確保

食品工場では、

  • すごく暑い

  • すごく寒い

といった過酷な環境が少なくありません。

このような状況を少しでも改善し、人手不足への対策を講じたいと考える企業も増えています。

3. 若い経営陣の危機意識

これまで高齢の経営者が見過ごしていた問題も、若い後継者世代から見ると「これはまずい」と感じるケースが多く、工場の建て替え検討に至るわけです。


しかし…建て替えを断念せざるを得ない現実

ところが、いざ建て替えようとした際に、断念せざるを得ないケースも多発しています。
その大きな理由が——


建築費用の高騰

ここ数年、建築費用は急激に高騰しています。
下記の記事にもあるように、右肩上がりで価格が上昇しており、止まる気配がありません。

👉 参考記事:建築費の高騰について

特に食品メーカーの工場ではこの傾向が顕著です。
例えば、温度管理が必要な水産工場などは、建築費が非常に高額になります。

和菓子のように常温製造が可能な工場でも、坪単価130万円以上になることが一般的です。

さらに、設備も高騰しています。
トンネルフリーザーなどは、以前は5,000〜7,000万円だったのが、現在は1億円超えとなっています。


小規模企業ほど打撃が大きい

この問題が特に深刻なのは、小規模企業や利益率の低い企業です。

食品工場では、規模の大小にかかわらず必要な設備があります。
例えば、

  • ボイラー

  • キュービクル

  • 前室

といった設備は、規模が小さくても省略できません。
(👉 HACCPとゾーニングの解説

そのため、売上が小さい企業ほど、工場建設費が売上に占める割合が大きくなり、大きな負担となります。


建築費用の実例

最近の実例としては、

  • 年商3億円の水産加工会社:建設費11億円

  • 年商4億円の惣菜メーカー:建設費8億円

といったケースもあります。
しかも、これらは土地代を含まない金額です。


銀行から借りられない可能性も

「銀行から借り入れすれば良いのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、売上が小さい企業では、それも難しい場合があります。

たとえば、売上5億円の会社が10億円を借りて建設すると仮定しましょう。

  • 利息1%、15年返済の場合:年間返済約7,100万円

  • 営業利益率5%なら利益は2,500万円

このように、返済額が利益を大きく上回るため、銀行側も融資に慎重にならざるを得ません。


まとめ:今後に向けて

今回は、まず

  • 工場建築費が大きく高騰しているという現実

についてお伝えしました。

「しばらく様子を見れば、建築費は下がるのでは?」と期待されている方も多いかもしれません。
しかし、残念ながらその可能性は極めて低いのが実情です。


次回予告:なぜ建築費は高騰し続けているのか?

次回の記事では、

  • なぜ建築費がここまで高騰しているのか?

  • 今後、建築費は本当に下がらないのか?

といった背景や理由について、もう少し深掘りしてお届けします。

それでは、また。

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