2026.02.06

“社長をやめる”ことで、会社が動き出すという逆説

こんにちは。
アカネサス代表の北條竜太郎です。

今回も引き続き、シリーズ
「再設計する経営──“社長であること”の呪縛を超えて」
をお届けしています。


全社員が辞めた広告代理店の社長が見つけた「再出発の構造」

前回は、ある広告代理店の社長が
**「全社員が辞める」**という出来事をきっかけに、
「自分がいなければ成り立たない会社をつくっていた」と気づいた話を紹介しました。

今回はその続編です。


“社長をやめる”という経営のリセット

立て直しを決めた社長が最初に取り組んだのは、
「自分をあらゆる業務の出発点にしない」構造への転換でした。

それまで彼は、
売上管理・提案・採用・意思決定──
あらゆる工程を自分で見ていたといいます。

「全部見てないと不安だった。社員に任せると崩れる気がして。」

しかし、ある瞬間、気づいたそうです。

「自分が“組織のボトルネック”になっていた。」


「社長を機能として再設計する」

そこから彼は、徹底的に業務を洗い出しました。
そしてすべてを文書化・可視化し、こう定義したのです。

「誰が、どの基準で、どこまで判断してよいか。」

口頭文化をやめ、
感覚的な判断をルールへと落とし込む。

それは、「社長をやめる」というよりも、
“社長という機能”を再設計する作業でした。


「動かない方が、成果が出る」

最初のうちは、社員も戸惑いました。
「本当に任せていいんですか?」という不安の声もあった。

それでも、徐々に変化が訪れます。

社員たちは自分の判断で動き始め、
報告は簡潔に、相談は減り、
成果のスピードが上がっていった。

「動かない方が成果が出る。動かない方が社員が育つ。
そう思えたとき、初めて“社長じゃなくてもいい”と思えたんです。」

この言葉は、単なる「任せる技術」ではなく、
経営者の内面的構造の変容を語っています。


「社長でいること」が存在価値になると、人は手放せない

多くの経営者は、
「手放した方がいい」と頭では分かっています。

でも、実際には手放せません。

なぜか。
それは、“社長でいること”が自分の存在価値になってしまうから。

つまり、手放すことは「自分を失う」ことに感じてしまうのです。

だからこそ、
「社長という機能を、自分から引きはがす」作業は、
実務よりも精神構造の再設計なのです。


経営者を苦しめる“3つの負荷”

経営の現場には、
数字では測れない「見えない筋肉痛」のような負荷が存在します。

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1. リスクの引受け
社員の生活、借入、自分の将来──すべてを背負う。
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2. 判断の孤独
最終決定は常に自分。相談できる相手がいない。
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3. 感情のコントロール
不安でも笑顔でいなければならない場面が続く。
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これらの負荷は、
「社長ってこんなもんか」と思うほどに蓄積していきます。

でも、それは弱さではありません。
本質に向き合うためのサインです。


「越えられない壁」は、“成果の上限”ではない

経営者の前には、いくつもの「壁」が現れます。

  • 社員数の壁:3人・10人・20人

  • 売上の壁:3,000万・1億・3億・10億

これらの壁は、単なる数字の問題ではなく、
構造・役割・情報・関与度の再構築を迫るタイミングなのです。

つまり、壁とは「限界」ではなく、
“これまでのやり方を超えられるか”の通過点。

それを超えたとき、ようやく次の地平に立てるのです。


次回予告:「仕事を遊びで埋め、遊びを仕事で埋める」

次回の最終回では、
この社長が再設計の果てに見出した言葉──

「仕事を遊びで埋め、遊びを仕事で埋める」

この一見矛盾したフレーズの中にある、
“経営を生き直すための構造”を解きほぐします。

それではまた、次回の投稿で。


北條竜太郎
アカネサス株式会社 代表

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