こんにちは、北條です。
今回は、「補助金の相談が遅くなったことで損をしてしまった実例」についてご紹介します。
最近、補助金の活用を希望される企業からのご相談が増えていますが、「もう少し早ければ…」というケースが後を絶ちません。
特に工場建設のように大きなプロジェクトでは、その影響が非常に大きくなります。
たとえば、工場建設計画がほぼ決まり、建設が目前に迫ってからご相談をいただくケース。
このような場合、次のような問題が発生します。
工場建設に使える、非常に有利な補助金のひとつに「HACCPハード事業補助金」があります。
この補助金は例年12月に公募が始まりますが、実質的な準備は9月頃から始まる「事前相談」からスタートします。
事前相談では自治体による非公式の審査が行われるため、12月に相談しても間に合わないのが実情です。
結果として、
「来年の申請でお願いします」
という返答が農水省から返ってくることもあります。
つまり、工事を予定している1年ほど前には相談を開始しておく必要があるのです。
このタイミングを逃したことで、1年半以上、建築が後ろ倒しになってしまった企業もあります。
さらに、前回の記事でも触れましたが、建設費用は年々高騰中です。
2024年問題
人件費・資材の高騰
IR・万博などの大型イベント
これらの影響により、2030年前後までは建設コストが上昇し続けると予想されています。
タイミングを誤ることで、補助金の恩恵よりもコスト増加のデメリットの方が大きくなってしまうことも十分にあり得ます。
もうひとつの失敗例が、本来であれば組み合わせて使える補助金を知らずに、機会損失してしまうケースです。
たとえば、「HACCPハード補助金」では空調設備などは補助されますが、エネルギー関連設備(ボイラーやキュービクル等)は対象外です。
この理由は、あくまでもHACCP対応のための補助であり、それに直接関係しない最低限の設備は補助対象にならないからです。
生産スペースの空調:補助対象
事務スペースの空調:補助対象外
では、これらをどうカバーするのか?
答えは、「省エネ補助金」など他の制度と組み合わせて活用することです。
省エネ補助金を活用すれば、空調やボイラーといった基本インフラ設備にも補助が出ます。
つまり、補助額を最大化するためには、早めに全体計画を立て、掛け合わせの可能性を検討することが必要不可欠です。
食品業界で最も広く知られている補助金のひとつに「ものづくり補助金」がありますが、現在は活用しづらくなってきています。
ものづくり補助金には、以下のような厳しい賃上げ要件が課されています。
年率平均1.5%以上の給与支給総額の増加
最低賃金+30円以上の水準維持
年率平均3%以上の付加価値額増加
これらを満たせなかった場合、補助金の返還が必要になる可能性もあります。
特に給食業などの労働集約型の業態では、賃上げにより補助金のメリットが消し飛んでしまうケースも。
このような背景から、今注目されているのが農水省系の補助金です。
特に「HACCPハード事業」をはじめとする補助金には、賃上げ要件がありません。
また、補助額も非常に高額で、2億・5億・20億円というスケールも可能です。
それは「食品安全保障」を国の最重要課題のひとつとして位置づけているからです。
“すべての国民が、将来にわたって良質な食料を合理的な価格で入手できるようにすることは、国の基本的な責務です。”(農水省HPより)
だからこそ、農業・水産・食品業界の活性化に向けた予算が惜しみなく投入されているのです。
ただし、農水省系補助金には特殊な注意点もあります。
農水系補助金は、各都道府県や市町村が窓口となっています。
しかし、役所の立場上「公平性」が求められるため、具体的なアドバイスはしてくれないという問題があります。
「聞けば答えるけど、自分からは教えてくれない」
そんなスタンスが基本です。
また、地方にあらかじめ予算が振り分けられている関係上、地元企業向けに先行案内されて、一般公募が始まる前に予算が尽きるというケースも。
ですから、早めの準備・相談が極めて重要なのです。
今回は、補助金相談が遅れたことで損をしてしまった事例をご紹介しました。
特に、工場建設や設備導入のような中長期の投資を検討されている場合は、1年前からの準備が鍵を握ります。
補助金は「知っている人」「準備している人」だけが、その恩恵を最大限受け取れます。
ご自身の事業にマッチする補助金の情報や戦略を立てるためにも、早め早めのご相談をお勧めします。
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