2026.01.05

イタリアの中小食品メーカーに学ぶ「小さくても儲かる仕組み」

こんにちは。
アカネサス代表の北條竜太郎です。

この3回シリーズの最終回では、海外の事例──
とくにイタリアの中小食品メーカーの戦略を取り上げます。


日本とイタリアの「儲かる構造」の違い

第1回では、日本の食品メーカーがスケーラブル戦略に巻き込まれ、
g単価とブランド価値を毀損している構造を整理しました。

第2回では、それに対抗する中小の「非スケーラブル戦略」を紹介しました。

そして今回は、
「なぜイタリアの小さな食品メーカーは利益を出せているのか?」
という仮説をもとに、
小さくても儲かる仕組みのヒントを探っていきます。


イタリアの中小メーカーに感じた“余裕”

数年前、ヨーロッパを視察で訪れた際、
イタリア北部のとある食品メーカーの社長と話す機会がありました。

会社の規模は、零細といっていいほど小さい。
それでも、その人の表情や言葉から感じたのは「余裕」でした。

一方で、日本の食品メーカーはどうでしょうか。

  • 売上はある

  • 商品の品質も高い

  • それでも、価格に縛られ、納期に追われ、販路に飲まれる

つまり、「利益を出す仕組み」が存在しないのです。


比較データから見える仮説

リクルートワークス研究所のレポートによれば、
日本とヨーロッパ(とくにイタリア)の中小企業には、
経営指標の構造的な差が見られます。

詳細な統計は今後さらに検証が必要ですが、
私は現時点で、
イタリアの中小製造業のほうが相対的に収益性が高い
という仮説を持っています。

では、なぜそんなことが可能なのか。
そこには、2つのポイントがあると考えています。


1. 商品に“意味”がある

イタリアでは、
「この地域で、こう作っている」こと自体が価値になります。

たとえば、
地名や製法を守る食品には「DOP(原産地名称保護)」や
「IGP(地理的表示保護)」という規格があり、ラベルに明記されます。

つまり、

「この商品は、◯◯という物語を持っている」
という前提で販売されているのです。

一方、日本にも地域ブランド認証はあります。
大阪なら「大阪産(もん)」などがその例です。

ただし残念ながら、
DOPやIGPのように**“価格を支える権威”**には育っていません。


2. 高く売る“舞台”がある

イタリアの食品流通では、
**EATALY(イータリー)**のような“高単価を支える空間”が重要な役割を果たしています。

  • 地場の小規模商品を厳選して扱う

  • 作り手の顔や背景を見せる

  • 試食や飲食スペースで「体験ごと売る」

EATALYの棚には、
利益率50%以上で販売される小瓶のオリーブオイルが並び、
購入者は「何グラムいくら」ではなく
**「どんな背景の商品か」**で選びます。

日本のスーパーが
「いかに安く・速く売るか」に最適化されているのに対し、
イータリーは「なぜ高くても選ばれるか」を設計する売り場です。


日本の中小企業にも応用できること

もちろん、制度も文化も異なります。
しかし、次のような考え方は日本でも十分に応用可能です。

  • 小ロットでも、自ら物語とともに届ける商品設計

  • 販売を“価格主導”から“提案主導”へ転換する

  • 作り手自身がブランドを語る

つまり、g単価を上げるために“小ささ”を武器にする
これが、イタリアから学べる最も実践的な示唆です。


編集後記|仮説を現場で確かめたい

今回の内容はあくまで仮説です。

実際にイタリアの中小食品メーカーの財務指標を網羅的に確認したわけではなく、
DOP制度やEATALYの収益構造も今後の研究課題です。

ただし、
日本の中小食品メーカーが直面する「利益が出にくい構造」に対して、
イタリアには異なる設計思想が存在することは確かです。

私はこの秋、イタリア・ピエモンテ州を訪れ、
現地の食品メーカーや売り場を視察する予定です。
さらに、2026年度には立命館大学大学院 食マネジメント研究科への進学を目指し、
現場と研究の両面から検証を進めていく考えです。

現場観察 × 制度比較 × ブランド構造分析
この3つの軸から、
「中小でも利益を確保しながら独自性を維持できるモデル」
を明らかにしていきたいと思います。

北條

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