こんにちは。
アカネサス代表の北條竜太郎です。
これまで私は、
「構想とは何か」
「理念とはどう再定義されるか」
といったテーマを、自らの経験を通してお話ししてきました。
今回は少し視点を変えて、
“ある出来事”をきっかけに見えた、仕事の正体について書いてみたいと思います。
2022年、あるお客様の工場を訪問した際、
階段から転落し、背骨を骨折しました。
背中から落ち、激痛で動けなくなった瞬間、
「これは、まずいことになった」と直感しました。
診断は胸椎圧迫骨折。
数週間の入院と、長いリハビリ生活が始まりました。
毎日、注射・点滴・坐薬を繰り返し、
「今日をどう終わらせるか」だけを考える日々。
筋肉は固まり、動かすたびに激痛。
「本当に元に戻るのか」「一生このままではないか」──
そんな不安とともに過ごしていました。
そして何より衝撃だったのは、
骨を折ることが、あまりにも簡単だったという事実。
30分前まで何も疑わずに歩いていたのに、
突然、自分の身体が“使えなくなる”。
その経験を経て、私はこう思うようになりました。
「人生は、15分後に終わっているかもしれない。」
この瞬間から、私の死生観は明確に変わりました。
しかし不思議なことに、
この重傷にもかかわらず、私の入院期間は10日間で済みました。
医師からも「信じられない回復力だ」と驚かれました。
おそらく、長年続けてきた筋トレの習慣が、
身体の“底力”を支えてくれたのだと思います。
私はこの経験から、ひとつの教訓を得ました。
備えていたことが、想定外の危機を越えさせてくれる。
たとえ日々の努力が地味でも、
それが“いざ”というとき、自分を守る盾になる。
この実感は、今も私の中で静かに生きています。
痛みが少し和らいだある夜、
私はベッドの上で、自分の仕事を考えていました。
補助金のスキーム。
機械の選定。
資金調達と銀行交渉。
行政との条件調整。
ふと、心の中に浮かびました。
「これ、補助金代行じゃないな」と。
たしかに、どの案件も「補助金を取る」ことから始まりました。
しかし気づけば私は、
機械の選定に踏み込み、
設計士と図面を擦り合わせ、
銀行交渉に同席し、
行政や商工会の調整まで行っていた。
もはや“補助金コンサル”でも“構想支援会社”でもない。
ただ、お客様の困っていることをすべてつなぎ直していたのです。
このとき、はっきりと気づきました。
私たちは、「事業の卸・商社」のような存在になっていたのだと。
━━━━━━━━━━━━━
私たちが“つなぎ直していた”もの:
━━━━━━━━━━━━━
機械装置
マーケティング設計
資金調達支援
行政との橋渡し
制度翻訳
これらをバラバラではなく、一つの構想として結び直す。
その“編集”こそが、私たちの仕事でした。
外注は、パーツに分けられるから外注できます。
しかし、いくら外注を集めても、経営そのものにはならない。
業務をこなすだけでは、
「どんな会社にしたいのか」「誰のための工場か」といった
本質的な問いが置き去りになってしまう。
私たちが関わるとき、
見積や制度では扱えない“ひとつの問い”が、必ず出てきます。
その問いに、一緒に向き合えるかどうか。
それこそが、業務代行との決定的な違いだと感じています。
骨折がなければ、私はこの視点にたどり着かなかったかもしれません。
それまでの私は、
「構想とは、制度を読む力」
「計画を描く力」
だと思っていました。
しかし今は違います。
構想とは、現場の詰まりを解き、空洞を埋め、事業を“動かす編集業”である。
そしてもう一つ。
あの日以来、私はこう思っています。
構想とは、“死んでも悔いのないように整えておくこと”。
15分後に自分がいなくなっても、
誰かが動けるように。
誤解なく、迷わず、無駄なく進めるように。
構想とは、そのための贈与なのかもしれません。
あなたの仕事にも、
「これは自分の仕事じゃない」と思いながら、
なぜか動いてしまった瞬間があるかもしれません。
でも、そこにこそ、
あなたの仕事の“本当の正体”が隠れている
のだと思います。
骨折は、私にそれを見せてくれました。
止まることで、仕事が見えた。
そんな出来事でした。
それではまた。
株式会社アカネサス
代表取締役
北條竜太郎
お気軽にお問い合わせ、ご相談ください。