2025.12.08

骨折して気づいた、仕事の“正体”

はじめに

こんにちは。
アカネサス代表の北條竜太郎です。

これまで私は、
「構想とは何か」
「理念とはどう再定義されるか」
といったテーマを、自らの経験を通してお話ししてきました。

今回は少し視点を変えて、
“ある出来事”をきっかけに見えた、仕事の正体について書いてみたいと思います。


背骨骨折と「死生観の変化」

2022年、あるお客様の工場を訪問した際、
階段から転落し、背骨を骨折しました。

背中から落ち、激痛で動けなくなった瞬間、
「これは、まずいことになった」と直感しました。

診断は胸椎圧迫骨折
数週間の入院と、長いリハビリ生活が始まりました。

毎日、注射・点滴・坐薬を繰り返し、
「今日をどう終わらせるか」だけを考える日々。

筋肉は固まり、動かすたびに激痛。
「本当に元に戻るのか」「一生このままではないか」──
そんな不安とともに過ごしていました。

そして何より衝撃だったのは、

骨を折ることが、あまりにも簡単だったという事実。

30分前まで何も疑わずに歩いていたのに、
突然、自分の身体が“使えなくなる”。

その経験を経て、私はこう思うようになりました。

「人生は、15分後に終わっているかもしれない。」

この瞬間から、私の死生観は明確に変わりました。


備えていたことの底力

しかし不思議なことに、
この重傷にもかかわらず、私の入院期間は10日間で済みました。

医師からも「信じられない回復力だ」と驚かれました。
おそらく、長年続けてきた筋トレの習慣が、
身体の“底力”を支えてくれたのだと思います。

私はこの経験から、ひとつの教訓を得ました。

備えていたことが、想定外の危機を越えさせてくれる。

たとえ日々の努力が地味でも、
それが“いざ”というとき、自分を守る盾になる。
この実感は、今も私の中で静かに生きています。


ベッドの上で見えた「仕事の正体」

痛みが少し和らいだある夜、
私はベッドの上で、自分の仕事を考えていました。

補助金のスキーム。
機械の選定。
資金調達と銀行交渉。
行政との条件調整。

ふと、心の中に浮かびました。

「これ、補助金代行じゃないな」と。

たしかに、どの案件も「補助金を取る」ことから始まりました。
しかし気づけば私は、

  • 機械の選定に踏み込み、

  • 設計士と図面を擦り合わせ、

  • 銀行交渉に同席し、

  • 行政や商工会の調整まで行っていた。

もはや“補助金コンサル”でも“構想支援会社”でもない。
ただ、お客様の困っていることをすべてつなぎ直していたのです。


「事業の卸・商社」のような存在に

このとき、はっきりと気づきました。

私たちは、「事業の卸・商社」のような存在になっていたのだと。

━━━━━━━━━━━━━
私たちが“つなぎ直していた”もの:
━━━━━━━━━━━━━

  • 機械装置

  • マーケティング設計

  • 資金調達支援

  • 行政との橋渡し

  • 制度翻訳

これらをバラバラではなく、一つの構想として結び直す
その“編集”こそが、私たちの仕事でした。


“業務代行”との違い

外注は、パーツに分けられるから外注できます。
しかし、いくら外注を集めても、経営そのものにはならない

業務をこなすだけでは、
「どんな会社にしたいのか」「誰のための工場か」といった
本質的な問いが置き去りになってしまう。

私たちが関わるとき、
見積や制度では扱えない“ひとつの問い”が、必ず出てきます。

その問いに、一緒に向き合えるかどうか。

それこそが、業務代行との決定的な違いだと感じています。


骨折が気づかせた「構想」の本質

骨折がなければ、私はこの視点にたどり着かなかったかもしれません。

それまでの私は、
「構想とは、制度を読む力」
「計画を描く力」
だと思っていました。

しかし今は違います。

構想とは、現場の詰まりを解き、空洞を埋め、事業を“動かす編集業”である。

そしてもう一つ。

あの日以来、私はこう思っています。

構想とは、“死んでも悔いのないように整えておくこと”。

15分後に自分がいなくなっても、
誰かが動けるように。
誤解なく、迷わず、無駄なく進めるように。

構想とは、そのための贈与なのかもしれません。


最後に:あなたの仕事の“正体”はどこにありますか?

あなたの仕事にも、
「これは自分の仕事じゃない」と思いながら、
なぜか動いてしまった瞬間があるかもしれません。

でも、そこにこそ、

あなたの仕事の“本当の正体”が隠れている
のだと思います。

骨折は、私にそれを見せてくれました。
止まることで、仕事が見えた。

そんな出来事でした。

それではまた。

株式会社アカネサス
代表取締役
北條竜太郎


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