2026.03.23

【リーダーの在り方】非常時のふるまいは、“リーダーの本質”を暴く──

第1話:「共感なき演出」が信頼を崩す瞬間

非常時には、その人の本質があらわになります。

とりわけリーダーという立場にある者は、
“何を言うか”以上に、“どうその場に在るか”が問われます。

本シリーズでは、アメリカの事例をもとに、
非常時におけるリーダーのふるまいについて考察していきます。

第1回のテーマは、

「この笑顔は、いったい何に向けられたものだったのか?」

です。


エルパソ銃乱射事件と、ある写真

2019年、アメリカ・テキサス州エルパソで銃乱射事件が発生しました。

犯人は移民への憎悪を動機に22人を殺害。

その犠牲者の中に、アンドレ&ジョーダン・アンチンド夫妻がいました。

母ジョーダンは、生後2か月の息子ポール君を守るために身体で覆い、
父アンドレは、妻と息子を守ろうと銃弾の前に立ちはだかりました。

そして二人は命を落とします。


その数日後の“大統領の笑顔”

数日後、当時のトランプ大統領は病院を訪問しました。

カメラの前で赤ん坊を抱き、親指を立て、満面の笑顔を見せる。

その写真は広く報じられました。

ここで、あらためて問いたいのです。

彼は、何に対して笑っていたのでしょうか?

救われた命への安堵だったのかもしれない。
訪問という行為を“成果”として演出したかったのかもしれない。

しかし、

それがその場において適切なふるまいだったかどうかは、別の問題です。


共感なき演出は、信頼を壊す

この笑顔が放っていたものは、
多くの人にとって「共感」ではありませんでした。

それは“自己演出”に見えた。

そしてその一瞬が、何より雄弁に、

リーダーとしての資質

を語ってしまったのです。

リーダーにとって、共感は装飾ではありません。

共感とは、

同じ地面に立つこと

です。


リーダーは「どう居合わせたか」で判断される

非常時において問われるのは、

  • 何を言ったか

  • どんな政策を出したか

よりも先に、

  • どう黙っていたか

  • どんな表情で立っていたか

  • そこに“痛み”を感じていたか

という、存在の質です。

リーダーとは、

その場に立つ資格を、自らのふるまいで証明する者

です。


共感は、沈黙の中に宿る

私はこの写真を見たとき、強く思いました。

共感とは、大きな言葉ではなく、
沈黙や間合いの中に宿るものだということを。

非常時は、リーダーの演説力ではなく、

ふるまい

を通じて、その本質を暴きます。

これは政治の話ではありません。

企業経営、組織運営、プロジェクト責任者──
あらゆる「立つ側」にいる人間の話です。


次回予告|第2話

語る人、怒る人──
そのどちらでも信頼は得られない。

オバマとトランプ、それぞれのふるまいと限界。
そして、本当に信頼されるリーダーとはどのような存在なのか。

次回、さらに踏み込んで考察します。

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