こんにちは。
アカネサス代表の北條です。
今回のテーマは、
「ビジネスの構造のどこに変化の起点があるかを読む思考」
についてです。
あわせて本記事から、
「読書によって考える力を鍛える」シリーズも始めます。
経営の現場で本当に役立つ“読む力”とは何か。
その視点から、本を紹介していきます。
経営者が経営本を読む──
これは自然な習慣です。
しかし私は、経営本をどれだけ読んでも
**「構造を読む力」**はなかなか育たないと感じています。
なぜなら、多くの経営本は
習慣
行動
マインドセット
に焦点を当てる一方で、
変化の構造や背景の関係性には、あまり踏み込まないからです。
さらに言えば、私は経営本に対して
ある“根本的な疑念”を抱いています。
それは──
多くの経営本が「生存者バイアス」に基づいた
“偶然成功した者の語り”であること。
たまたま成功した事例を、
あたかも普遍的な法則のように語る。
都合の悪い失敗や矛盾は、書かれない。書けない。
それは「思考の材料」ではなく、
「答えのように見える何か」を提示しているにすぎません。
だから私は、ビジネス書よりもむしろ、
再現できない状況に向き合うための構造思考──哲学・思想の書物の方が、
経営の言語化において役立つと感じています。
私は大学院時代、
社会学・思想研究の領域に身を置いていました。
ニクラス・ルーマン
ミシェル・フーコー
スラヴォイ・ジジェク
大澤真幸先生の講義
“背後にある構造”を読み解く営みに、強い興奮を覚えていました。
その後、私はビジネスの現場へ移ります。
補助金制度の支援
工場建設の設計
行政との交渉
金融スキームの構築
当初は、「抽象の世界から逃げてきた」と感じていました。
しかし、あるとき気づきます。
今やっていることのすべては、
「構造と変化の接点」を読む作業そのものだ
ということに。
なぜこの会社は制度を活用できないのか。
なぜ現場改善は繰り返し失敗するのか。
それは「行動」の問題ではなく、
「構造」の問題なのです。
📘 『構造と力──記号論を超えて』(浅田彰)
1980年代、日本にポストモダン思想を紹介した代表的な一冊です。
浅田はこう述べます。
構造とは安定性の枠組みである。
だがそこには常に逸脱する“力”が作用している。
変化は、その「力」がどこに噴き出すかによって決まる。
これは現場で構想に取り組む私にとっても、
極めて実践的な視点です。
構造を見ずに、変化は設計できない。
しかし構造だけを見ても、変化は起こらない。
その間にある
**「力の作用点」**を見抜く必要があるのです。
📘 『千のプラトー(第1章)』ドゥルーズ=ガタリ
第1章「リゾーム」では、
思考や構想を、分岐的・非階層的ネットワークとして捉える
という視点が示されます。
かつての私は、
補助金 → 機械 → 工場 → 販路
と直列的に考えていました。
しかしこの本は、思考を一気にほぐします。
工場の構想から販路を設計する
自治体の政策から事業計画を逆設計する
制度・資金・人材を多点的に接続する
こうした多点接続的思考を可能にしてくれるのです。
実務では、順番を追うだけでは足りません。
複雑な状況では、
「どこを動かせば全体が変わるか」
という読解力が問われます。
構想とは、
再現できない状況の中で、
どこをどう動かせば変化が起こるかを読む行為
です。
だから私は、経営本よりも先に、
構造を読む訓練としての哲学・思想書
を勧めたいのです。
この読書案内シリーズでは、全3回にわたり、
構造を読むための書籍を紹介していきます。
次回は、
“思い通りにいかない”ことを前提に、
構想の中に「ズレ」や「逸脱」をどう組み込むか──
📘『不可能性の時代』を起点に考察していきます。
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