こんにちは。
アカネサス代表の北條です。
今回は、森岡毅氏の「謙虚さ」について掘り下げてみたいと思います。
森岡氏を見ていて感じるのは、謙虚さにはいくつかの層があるということです。
表面的な謙虚さと、本質的な謙虚さはまったく別物です。
その違いを整理してみます。
私は、謙虚さには3つの層があると考えています。
態度や言葉遣いに表れる謙虚さです。
日本人が最も得意とする振る舞いであり、社会的な潤滑油として機能します。
森岡氏は、この層の謙虚さを持っています。
話し方は穏やかで、態度も丁寧です。
「自分が間違っているかもしれない」と考えられる謙虚さです。
経営者にとって最も重要な資質の一つです。
では、森岡氏にこの知的謙虚さがあるのか。
私は疑問を持っています。
「成功確率73%」
「需要予測の誤差1%」
こうした発言には、
「自分の計算は正しい」
という前提があり、
「自分が間違っているかもしれない」
という留保が感じられません。
最も深い層です。
「自分は特別な存在ではない」
と心の底から理解している状態です。
人は誰でも、
存在です。
自分には分からないことがある。
自分ではどうにもならないことがある。
その事実を受け入れられるかどうか。
これが存在的謙虚さです。
残念ながら、森岡氏の言動を見ていると、この層が決定的に欠けているように感じます。
森岡氏は、自著やインタビューの中で、
「国語が苦手だった」
と繰り返し語っています。
だから数学に逃げた。
P&Gで数学的マーケティングを学び、ようやく居場所を見つけた。
これは非常に正直な自己分析だと思います。
しかし、この告白の中に私は一つの限界を感じます。
国語とは何でしょうか。
正解がなく、解釈が分かれる世界です。
「分からない」が前提にあり、曖昧さの中に留まる力が求められます。
一方、数学はどうでしょうか。
定義を決めれば答えが出る世界です。
曖昧さを排除し、「分からない」を減らしていくことができます。
森岡氏は、
「国語が苦手だから数学に逃げた」
と言っています。
言い換えれば、
曖昧さに耐えられないから、数学で武装したのではないか。
私はそう感じています。
経営において、数字で解ける問題は実はそれほど多くありません。
こうした問題に明確な答えはありません。
経営者の仕事は、この「分からなさ」に耐えることです。
しかし曖昧さに耐えられない人は、
数字で制御しようとする。
確率で未来を支配しようとする。
そして「負けない構造」を設計する。
森岡氏の行動パターンには、その傾向が強く表れているように見えます。
「成功確率73%」
という言葉は、一見すると科学的で合理的に聞こえます。
しかし本来、未来は曖昧なものです。
それを数字で確定させようとする。
そして結果がどう転んでも説明できる状態を作る。
成功すれば、
「予測通りだった」
失敗すれば、
「27%側に入った」
どちらにしても、
「分からなかった」
と認める必要がなくなるのです。
存在的謙虚さを突き詰めると、次の3つになります。
これらを本当に受け入れられるかどうか。
どれだけ優秀な人でも限界があります。
どれだけ準備しても想定外は起きます。
どれだけ成功しても終わりは来ます。
その有限性を受け入れること。
それが存在的謙虚さの本質です。
存在的謙虚さの核心は、結局ここに行き着くと思います。
「自分はいつか死ぬ」
これを本当に受け入れているかどうか。
死を意識している人は、
「負けない構造」
に執着しません。
どうせいつか終わる。
どうせいつか手放す。
どうせいつか忘れられる。
そう理解しているからです。
だからこそ、今この瞬間に誠実であろうとする。
逃げ道を作ることよりも、正面から向き合うことを選ぶ。
なぜなら、その方が限られた時間を有意義に使えるからです。
一方で、人は有限性を恐れます。
だから数字で制御しようとする。
だから構造で自分を守ろうとする。
だから「負けない設計」を作る。
私は、森岡氏の「負けない構造」の背景にも、この有限性への恐れがあるのではないかと感じています。
ずるさだけではない。
失敗を認めたくない。
限界を認めたくない。
終わりを認めたくない。
そうした人間的な恐怖が根底にあるのかもしれません。
存在的謙虚さとは、その抵抗を手放すことです。
それは弱さではありません。
むしろ、その覚悟を持った人間は強い。
失敗したら、
「分からなかった」
と認められる。
間違えたら、
「自分の限界だった」
と言える。
終わりが来ても、
「それが人間だ」
と受け止められる。
そういう人には、逃げ道は必要ありません。
森岡氏に欠けているのは、能力ではありません。
「分からない」を受け入れる勇気。
そして、人間の有限性を直視する覚悟です。
次回からは視点を広げ、
和田一夫氏、堀江貴文氏、永守重信氏などの経営者を取り上げながら、
それぞれの「存在的謙虚さ」について考察していきます。
── 北條竜太郎
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