2025.11.24

世界で伸びているプラントフードが日本で流行らない理由

はじめに

こんにちは、北條です。

近年、欧米を中心に**プラントベース食品(植物性代替食品)**の市場が急拡大しています。Beyond Meat や Oatly といった企業が牽引し、代替肉・代替乳・代替チーズはグローバルで数兆円規模に成長しました。

一方、日本ではその波が意外なほど小さいのが現状です。ただし、まったく伸びていないわけではなく、この10年で約5倍に拡大しているデータもあります。それでも、「導入しても売れない」「定着しない」という声が食品メーカーから多く聞こえてきます。

なぜ日本ではプラントフーズが広がらないのか。技術や情報の遅れではなく、構造的な壁があると考えています。ここでは、その背景を整理し、打開へのヒントを探っていきます。


1. 日本の購買行動は「思想」よりも「実利」

欧米での拡大は、

  • 気候変動への危機感

  • 動物倫理

  • サステナブルな選択

といった思想的モチベーションが支えになってきました。多少高くても食感が劣っても「選ぶ理由」が明確に存在します。

一方、日本では「環境のために代替肉を選ぶ」という行動は少数派。多くの消費者は味・価格・健康の3点バランスで判断します。
いくら地球にやさしくても、肉より高くて味が劣ると感じられれば手に取られにくい。特に物価上昇局面では、価格がより強い決定要因になります。つまり、日本市場では「思想」ではなく実利が先行します。


2. 伝統的な植物性食品の存在(豆腐・納豆・精進料理)

日本には古くから植物性食品の厚い基盤があります。
豆腐、納豆、湯葉、がんも、こんにゃく、精進料理——どれも動物性を使わず、ヘルシーで、長い歴史の中で家庭に受け入れられてきました。

この基盤は強みである一方で、欧米型の「肉/乳に似せる」代替品を**“あえて選ぶ理由が弱い”**状況も生みます。

  • 「植物性にしたいなら豆腐でいい」

  • 「なぜ肉に似せる必要があるの?」

という声は特にシニア層で根強い印象です。つまり、日本では代替という発想自体に懐疑的になりやすい。元来、豆類を日常的に摂る食文化があることも、代替食品の浸透を鈍らせる一因と感じます。


3. “本物志向”が強い日本人の特性

日本では「植物由来=ポジティブ」よりも、

  • 人工的/フェイクに見える

  • 加工度が高そう

  • 添加物が多そう

といった感情的なネガティブが先に立つことがあります。
「肉のように見える」「チーズのような食感」といった模倣設計は、技術的評価が高くても感情面で受け入れられにくい。コンビニ惣菜や冷凍食品でも、**“なんとなく不自然”**という印象だけでリピートに繋がらないケースが起きます。

加えて、味を整えるための添加物イメージや、エコ文脈のない売場では**“割高・不自然・そこまでおいしくない”**という受け止めになりやすく、定着を阻害します。


4. ストーリーの欠如──「なぜ今、これを食べるのか」

日本の売場では、プラントベースが
ヘルシー/新しい/ダイエット向けといった訴求に留まりがちです。それだけでは動機づけが弱い。

欧米ではヴィーガン・ベジタリアンだけでなく**フレキシタリアン(時々菜食)**に向け、

  • 罪悪感のない選択

  • 未来への投資

といった強いストーリーが共有されています。日本では「新商品」として棚に置かれるだけで、“なぜ今これを選ぶべきか”が語られていないことが多い。これが**『気になるけど買わない』**を生んでいます。言い換えれば、物語の設計が弱いのです。


日本で広げるための発想転換(食品メーカーへの提案)

上記を踏まえ、日本市場でプラントフーズを伸ばすための方向性です。

1)「代替」ではなく独立カテゴリとして設計する

  • 植物だからこそ出せる味

  • 五感で楽しむ“精進モダン”

  • 肉・乳の“コピー”ではなく、新しい食の体験価値を提示

2)思想ではなく感情で共感を生むパッケージング

  • 例)「週に一度、身体と地球にやさしいごちそう」

  • “正しさ”ではなく、楽しさ・ご褒美・気持ちよさに訴えるメッセージ

3)あえて似せない設計の勇気

  • 例)大豆ミートを“肉の代替”としてではなく、まったく新しい豆料理の再発明

  • 似せるほど比較されます。比較軸から降りる戦略が有効


機会は確実にある

参入障壁は高い一方、上手くいけば新しいブランド資産を築けます。
国内市場はまだ発展途上ですが、

  • 消費者の健康志向・環境意識の高まり

  • インバウンド需要の増加

といった追い風も存在。今こそ差別化の好機です。世界的潮流も学びつつ、日本市場に合った**“独立カテゴリ×感情訴求×非模倣”**の戦略づくりをおすすめします。

ぜひ今回の整理を、貴社の商品開発・マーケティング戦略にお役立てください。

北條


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