2026.02.23

経営本では身につかない──構造と変化の起点を読む力

こんにちは。
アカネサス代表の北條です。

今回のテーマは、

「ビジネスの構造のどこに変化の起点があるかを読む思考」

についてです。

あわせて本記事から、
「読書によって考える力を鍛える」シリーズも始めます。

経営の現場で本当に役立つ“読む力”とは何か。
その視点から、本を紹介していきます。


経営本では「構造を読む力」は育たない

経営者が経営本を読む──
これは自然な習慣です。

しかし私は、経営本をどれだけ読んでも
**「構造を読む力」**はなかなか育たないと感じています。

なぜなら、多くの経営本は

  • 習慣

  • 行動

  • マインドセット

に焦点を当てる一方で、

変化の構造や背景の関係性には、あまり踏み込まないからです。

さらに言えば、私は経営本に対して
ある“根本的な疑念”を抱いています。

それは──

多くの経営本が「生存者バイアス」に基づいた
“偶然成功した者の語り”であること。

たまたま成功した事例を、
あたかも普遍的な法則のように語る。

都合の悪い失敗や矛盾は、書かれない。書けない。

それは「思考の材料」ではなく、
「答えのように見える何か」を提示しているにすぎません。

だから私は、ビジネス書よりもむしろ、
再現できない状況に向き合うための構造思考──哲学・思想の書物の方が、
経営の言語化において役立つと感じています。


構造を読む訓練は、ビジネス以前にあった

私は大学院時代、
社会学・思想研究の領域に身を置いていました。

  • ニクラス・ルーマン

  • ミシェル・フーコー

  • スラヴォイ・ジジェク

  • 大澤真幸先生の講義

“背後にある構造”を読み解く営みに、強い興奮を覚えていました。

その後、私はビジネスの現場へ移ります。

  • 補助金制度の支援

  • 工場建設の設計

  • 行政との交渉

  • 金融スキームの構築

当初は、「抽象の世界から逃げてきた」と感じていました。

しかし、あるとき気づきます。

今やっていることのすべては、

「構造と変化の接点」を読む作業そのものだ

ということに。

なぜこの会社は制度を活用できないのか。
なぜ現場改善は繰り返し失敗するのか。

それは「行動」の問題ではなく、
「構造」の問題なのです。


おすすめ書籍①『構造と力』──変化はどこから噴き出すのか

📘 『構造と力──記号論を超えて』(浅田彰)

1980年代、日本にポストモダン思想を紹介した代表的な一冊です。

浅田はこう述べます。

構造とは安定性の枠組みである。
だがそこには常に逸脱する“力”が作用している。

変化は、その「力」がどこに噴き出すかによって決まる。

これは現場で構想に取り組む私にとっても、
極めて実践的な視点です。

  • 構造を見ずに、変化は設計できない。

  • しかし構造だけを見ても、変化は起こらない。

その間にある
**「力の作用点」**を見抜く必要があるのです。


おすすめ書籍②『千のプラトー』──直線思考を壊す

📘 『千のプラトー(第1章)』ドゥルーズ=ガタリ

第1章「リゾーム」では、

思考や構想を、分岐的・非階層的ネットワークとして捉える

という視点が示されます。

かつての私は、

補助金 → 機械 → 工場 → 販路

と直列的に考えていました。

しかしこの本は、思考を一気にほぐします。

  • 工場の構想から販路を設計する

  • 自治体の政策から事業計画を逆設計する

  • 制度・資金・人材を多点的に接続する

こうした多点接続的思考を可能にしてくれるのです。

実務では、順番を追うだけでは足りません。

複雑な状況では、

「どこを動かせば全体が変わるか」

という読解力が問われます。


構想とは、再現できない状況を読むこと

構想とは、

再現できない状況の中で、
どこをどう動かせば変化が起こるかを読む行為

です。

だから私は、経営本よりも先に、

構造を読む訓練としての哲学・思想書

を勧めたいのです。

この読書案内シリーズでは、全3回にわたり、
構造を読むための書籍を紹介していきます。

次回は、

“思い通りにいかない”ことを前提に、
構想の中に「ズレ」や「逸脱」をどう組み込むか──

📘『不可能性の時代』を起点に考察していきます。

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