こんにちは。
アカネサス代表の北條です。
本シリーズでは、食品・建設・機械・金融といった各業界を通じて、
なぜ“いいもの”や“いい提案”なのに、価格が通らないのか
という問題を、構造の視点から見てきました。
最終回となる今回は、その総括として
構想が社会を動かす時代
について整理したいと思います。
いま、多くの企業が
「価格が通らない。原価は上がり続けるのに……」
という悩みを抱えています。
しかし、正確に言えば
単に「通らない」のではありません。
“儲からない価格でしか通らない構想”が増えている
のです。
商品の質は十分に高い。
ストーリーもある。
提案にも工夫がある。
それでも、販路・金融・行政といった
社会の“通過構造”
に合っていなければ、
通ったとしても
薄利でしか通らない
構想になってしまいます。
それでは、実行できても続きません。
この20年、経営学では
サービス産業化
提案型営業
ソリューション提供
といった流れが繰り返し語られてきました。
つまり、
モノ売りからコト売りへ
という転換です。
しかし現実には、それでもなお
“儲かる価格”は通っていません。
理由は明確です。
構想が“価格”として通過する構造が設計されていないから
です。
たとえば、
誰に、どこで、どう話すのか
誰と一緒に構想するのか
金融・行政・販路に、どう接続するのか
こうした
「通すための構造」
がなければ、どれほど優れた構想でも
買いたたかれる
見送られる
条件に合わせて歪められる
という結果になります。
ここでいう「語る」とは、
単に話がうまいことではありません。
構想・判断・実装方法を、自分の言葉で説明できる状態
のことです。
たとえば、
なぜこの構想なのか
なぜ今やるのか
誰と通すのか
こうした問いに答えられなければ、構想は相手の都合で分解されます。
補助金の条件で歪められる
金融のリスク評価で縮小される
販路の価格表に押し込まれる
そして最後には、
語れない構想は、誰かの判断に委ねられ、やがて消えていく
のです。
サービタイゼーションも、ソリューション営業も、
どう売るか
どう提供するか
は扱ってきました。
しかし、
どう語るか
どう通すか
つまり、
“構想が社会を通過する構造”そのもの
については、十分に扱ってきませんでした。
GEのような大企業は、顧客の代わりに構想を設計することができました。
しかしそれは、「乗るか、乗らないか」を選ばせるモデルです。
これから必要なのは、
自ら構想を持ち、語り、通す企業
であり、同時に
それを共犯的に通す関係者のネットワーク
です。
かつて金融の役割は、
「何をやるか」が決まっていて、その資金をどうつけるか
でした。
しかし今は違います。
そもそも、
何をやるかが決まっていない
のです。
人手不足
縮小均衡
補助金依存
維持で精一杯の現場
やる気はあっても、語れる構想がない。
結果として、
資金需要そのものが消えていく
という現象が起きています。
金利を下げても動かない。
相談を持ちかけても、「やることがない」と返ってくる。
この構造では、金利競争に意味はありません。
構想がなければ、資金は必要とされない。
だからこそ、これからの金融に求められるのは
構想を一緒につくること
です。
構想は、次の3つが揃ったときに社会を通ります。
判断・理由・構造を、自分の言葉で説明できること。
金融・行政・販路など、どこを通すかが見えていること。
語りの同席者として、構造を共有し、一緒に通してくれる他者がいること。
この3つが揃ったとき、
構想は価格として通る
だけでなく、
通った後も崩されずに続く
ようになります。
構想を語るとは、
ビジョンを語ることではありません。
商品・設備・工程・価格・販路・制度・資金回収を、構造として説明できること
です。
たとえば、業種ごとに見れば次のようになります。
OEM先は、なぜうちを選ぶのか
1kgあたりいくらで売れる理由を語れるか
なぜこの鰹節が冷凍食品や業務用で選ばれるのか
なぜ今、海外や和食以外に出すのかを語れるか
なぜこの冷凍スイーツが1個400円で売れるのか
原料コストと販路設計をどうつないでいるか
この冷凍サバはどこで、いくらで、どう利益を出すのか
誰と組み、どの制度で工場を立て、何年で回収するのか
坪単価ではなく、発注者の収益計画に合わせて「なぜ建てるか」を語れるか
設計・施工だけでなく、PL全体で通す構想を持っているか
なぜこの機械が「利益を生む装置」として選ばれるのか
なぜこの提案なら補助金が通るのかを説明できるか
顧客が構想を通せない理由を語れているか
経営者の本当にやりたいことを、制度・資金・人の構造に翻訳できているか
どの業種も、
語れなければ売れない
語れなければ動かない
構造に入っています。
これは、戦略部門だけの話ではありません。
すべての現場の話です。
構想を持つことは、
もはや一部の特別な人の特権ではありません。
通らない構想。
価格が通らない提案。
選ばれない商品。
それが日常化した今、
すべての経営者・担当者が「語れる構想」を持たなければ生き残れない
時代に入っています。
本シリーズを通じて見えてきたのは、
構想が、業種の壁を超えて“構造”として機能する時代が来ている
ということです。
あなたの構想は、語れていますか。
価格として、社会に通っていますか。
共に語れる他者はいますか。
次に動かすのは、社会ではありません。
構想です。
このシリーズでお伝えしたかったのは、
語れる構想を持たなければ、モノはもう売れない
という現実です。
今、あらゆる産業が“コンサル化”しています。
製造業も建設業も、
商品を出すだけでは売れず、
なぜこの商品なのか
どの構造で収益化するのか
を語らなければ通らない。
一方で、
“語るだけ”の純粋な戦略コンサルも選ばれなくなっている
と感じています。
言葉だけでは、価格も、補助金も、販路も通りません。
語った構想を
どこで
誰と
どう実装するか
まで持っていなければ、信用されない時代です。
いま起きているのは、
メーカーがサービス化し、構想を語り始めた
コンサルがモノづくり・販路・資金設計に踏み込まなければ通らなくなった
という産業構造の交差です。
語ることは、誰の仕事でもある。
だが、語るだけではもう通らない。
次の時代に求められるのは、
語って、売って、実装まで導ける構想
です。
このシリーズが、その入口になっていれば幸いです。
── 北條竜太郎
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