こんにちは。
アカネサス代表の北條です。
「もう少し様子を見よう」
経営の現場で、この言葉を何度聞いたかわかりません。
「来年考えよう」
「景気が良くなったら」
「後継者が決まったら」
──その判断こそが、会社を殺します。
全3回でお届けしてきた「袋小路の経営」シリーズも今回が最終回です。
今回は、これまでお伝えしてきた2つの袋小路をどう突破するのか、そして「時間は味方ではない」という残酷な現実についてお伝えします。
まずは前回までの内容を整理しましょう。
そして、この2つは連動しています。
法令違反を正すには設備投資による効率化が必要です。
しかし、工場の建て替えや移転ができず、設備投資も進まない。
まさに出口が完全に塞がれた状態です。
多くの経営者は「現状維持」を選びます。
しかし、それが最も危険な選択です。
設備は毎年劣化します。
品質事故のリスクは上がり続けます。
競合他社は設備更新を進め、生産性を高めています。
現状維持とは、実質的には後退し続けることなのです。
「できる範囲で改修しよう」
その判断も危険です。
既存不適格の建物で部分改修を行っても、根本的な問題は解決しません。
数年後には再び同じ問題に直面します。
「自分の代だけ何とか持てばいい」
そう考える経営者もいます。
しかし問題は消えません。
むしろ時間とともに大きくなり、後継者はより厳しい状況で会社を引き継ぐことになります。
その結果、後継者がいなくなる。
これも先送りの代償です。
「いつかまずいことになるかもしれない」
ではありません。
「いつ破綻してもおかしくない」のです。
異物混入が発生。
監査で賞味期限の問題が芋づる式に発覚。
全取引停止、報道、信用失墜。
1〜3ヶ月で倒産するケースです。
南海トラフ地震が発生。
配管や設備が破損し、生産停止。
復旧費は数億円。
保険では足りず、取引先は他社へ移行。
3〜6ヶ月で資金が尽きます。
工場長や熟練工が退職。
ノウハウは属人化されており、品質が低下。
取引が縮小し、残った従業員も離職。
6ヶ月〜1年程度で崩壊していきます。
どのルートも、一度始まれば止めることは困難です。
中途半端な延命策は、すでに限界を迎えています。
工場の建て替えや移転を行い、問題を根本から解決する方法です。
「そんな資金はない」
そう思うかもしれません。
しかし、全額を自己資金で賄う必要はありません。
そこに突破口があります。
投資する体力がない。
後継者もいない。
そうであれば、価値があるうちに売却するという選択肢もあります。
ブランド。
顧客基盤。
レシピ。
従業員。
これらに価値が残っているうちに決断することが重要です。
倒産して価値を失うより、はるかに合理的な選択です。
選択肢Aを選ぶのであれば、補助金の活用を検討すべきです。
「補助金なんて数百万円程度では?」
と思う方もいるでしょう。
しかし食品製造業には億単位の補助金制度も存在します。
20億円規模の工場建設でも、大きな補助を受けられる可能性があります。
ただし、制度を知らなければ使えません。
補助金の存在を知らない企業は少なくありません。
知っていても、
「どうせ採択されない」
「面倒だからやらない」
と考えてしまいます。
しかし、採択されない理由の多くは制度ではなく申請方法にあります。
私はこれまで食品製造業に特化して補助金申請を支援してきました。
審査員が何を見ているのか。
どの数字を示せば説得力が出るのか。
どのようなストーリーで説明すれば採択されやすいのか。
同じ投資計画でも、申請書の作り方によって結果は大きく変わります。
補助金は「申請すればもらえるもの」ではありません。
「通し方を理解した上で申請するもの」なのです。
残念ながら、補助金制度は永続しません。
今年使える制度が、来年もあるとは限りません。
予算が削減されることもあります。
要件が厳しくなることもあります。
「来年申請しよう」
そう考えていたら制度自体が終了していた。
そんな事例を何度も見てきました。
建物は毎年古くなります。
設備は劣化します。
人材は流出します。
競合との差は広がります。
5年前に決断していれば楽だった。
5年後に決断するなら、もっと苦しい。
今この瞬間が、最も選択肢が多いタイミングです。
「もう少し様子を見る」
という選択肢は、実質的には緩やかな死を選ぶことと変わりません。
時間は味方ではなく、敵なのです。
全3回にわたり、「袋小路の経営」というテーマでお伝えしてきました。
「うちは関係ない」
そう思う方もいるかもしれません。
しかし、本当にそうでしょうか。
問題が起きてから動くのでは遅いのです。
経営において最も重要なのは、選択肢が残されているうちに動くことです。
現状を正しく把握し、今後の選択肢を整理する。
それだけでも、未来は大きく変わります。
「様子を見る」のではなく、「現実を見る」。
それが会社を守る第一歩だと私は考えています。
── 北條竜太郎
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