2026.10.02

【食品EC対談2】年商1億円を突破する3つのStep(前編)【全3回】

こんにちは。
アカネサス代表の北條です。

食品EC対談の第2回をお届けします。

前回は、株式会社ジャパンフードカンパニー代表取締役であり、食品EC特化型コンサルタントの南口龍哉氏に、食品ECが伸び悩む「構造的な問題」についてお聞きしました。

前回の主な内容は、以下の通りです。

・間違った努力
SNSやデザインへの過剰投資

・後投資型事業への理解不足

・費用対効果の誤判断

今回は、「では、どうすれば伸びるのか」という具体的な方法論に入ります。

引き続き、南口氏にお話を伺います。


EC売上の方程式

北條:
南口さん、前回は「なぜ食品ECが伸びないのか」をお伺いしました。
今回は「どうすれば伸びるのか」を教えてください。

南口:
はい。まず、ECの売上はシンプルな方程式で成り立っています。

EC売上 = 新規顧客売上 + リピーター売上

もう少し分解すると、

EC売上 =
新規アクセス数 × 新規転換率 × 客単価
+
リピートアクセス数 × リピート転換率 × 客単価

となります。

北條:
非常にシンプルですね。

南口:
売上が停滞している企業は、ほぼ例外なく「新規顧客アクセス数」または「新規転換率(CVR)」に問題を抱えています。

そして、この2つが伸び悩む要因は、前回お話しした「構造的問題」に集約されます。

北條:
なるほど。
では、具体的にはどのように改善していくのでしょうか。

南口:
これまで10社以上の年商1億円突破を支援してきましたが、成長している企業には共通する3つのStepがあります。


年商1億円を突破する3つのStep

食品ECで年商1億円を目指すうえで、重要なのは次の3つです。

Step1:「売れる1品」の確立

Step2:EC商圏の展開と商品の用途付加

Step3:業務効率化と収益性の向上

今回は、このうちStep1について詳しくお聞きします。


Step1:「売れる1品」を確立する

南口:
まず目指すべきは、年間500万〜1,000万円程度の売上を作れる「ECで売れる1品」を確立することです。

単品でも、セット商品でも構いません。

北條:
まずは1品に集中するということですね。

南口:
はい。
ここで重要なのは、次の2つです。

  1. 投資回収モデルの構築
  2. 3C視点での商品設計

初回注文だけで利益を出そうとしない

北條:
まず「投資回収モデル」について教えてください。
前回、「初回注文で利益を出すのは難しい」というお話がありましたね。

南口:
その通りです。

食品ECの多くは、初回注文だけでは販促費を回収できません。

だからこそ、リピート売上や定期購入によって販促投資を回収するモデルを構築する必要があります。


初回LTVとCPOを正しく見る

南口:
自社サイトの場合、初回LTVから「顧客1人あたりの投資回収の許容範囲」を設定します。

北條:
初回LTVとは何でしょうか。

南口:
初回注文で得られる粗利額から、その顧客を獲得するためにかかった広告費、つまりCPOを引いた金額です。

初回LTVがマイナス1,500円〜2,000円程度であれば、商材にもよりますが、一般的なリピート率で十分に回収可能なラインです。

北條:
初回はマイナスでも、リピートで回収するという考え方ですね。

南口:
はい。
そのうえで、リピート率ごとの投資回収シミュレーションを行います。

そして、許容範囲内を目指しながら、自社に合った新規顧客獲得策を模索・確立していきます。


CPOの相場感

北條:
CPOの相場感はどのくらいでしょうか。

南口:
昨今の食品ECマーケットでは、CPO4,000円ラインが一つの相場です。

3,000円を下回っていれば、かなり優秀です。

ただし、CPOの相場は年々上昇しています。

最初からいきなり4,000円近くになることはほぼなく、多くの企業がPDCAを回しながら、徐々に4,000円に近づけていくのが実情です。

北條:
つまり、「投下広告費に対する売上」ではなく、「新規顧客を1件いくらで獲得できたか」を評価軸にするわけですね。

南口:
はい。
メーカーの場合、「機械には数百万円出せるが、10万円の広告費は渋る」という傾向があります。

これは、広告費の効果が可視化されていないからです。

目的と判断基準を明確にすれば、販促費は「コスト」ではなく「投資」に変わります。

北條:
確かに、メーカーの社長からすれば、機械は形として残ります。
一方で広告費は、消えてしまうものという感覚が強いのかもしれません。


3C視点で商品を設計する

南口:
投資回収モデルと並行して、EC上における3C視点で自社商品と競合商品を比較し、強みや差別化のポイントを整理していきます。

場合によっては、価格も見直します。

北條:
3C視点とは何でしょうか。

南口:
3Cとは、以下の3つの視点です。

・Customer:顧客
・Competitor:競合
・Company:自社

ここでよく直面するのが、初回LTVのマイナスと、プライシング、つまり価格設定における粗利額とのジレンマです。

北條:
確かに、それまで売っていたカタログの値付けのまま、ECでも販売している事業者は多い印象です。

南口:
大半の企業はそのように販売されています。

もちろん、そのままEC市場で成功するショップもあります。

しかし多くの場合、自社都合だけの商品設計になっており、お客様から見ると「買う理由がない」状態になっているケースも少なくありません。

自分たちが真心込めて製造した商品は、どうしても良く見えてしまいますからね。


投資判断の先延ばしはリスクになる

北條:
投資判断を先延ばしにすることで、リスクは大きくなるのでしょうか。

南口:
そうですね。

投資に理解のない経営者はいませんし、CPOはもちろん低い方がいいです。

ただ、残念ながらCPOは年々上昇しています。

私がECコンサルを始めた14年前は、CPO設定が2,500円ほどでした。

10年前で3,000〜3,500円程度。

もちろんPDCAを行い、CPOの改善には取り組みます。

しかし年単位で見ると、「今年1,000件、来年1,000件」を獲得するよりも、「今年2,000件」を獲得した方が、販促費の総額は下がるとも言えます。

北條:
先延ばしにするほど、顧客獲得コストが上がっていくわけですね。

南口:
はい。
実際に私の支援先でも、全社的な収益状況と相談しながら、「できるだけ早く、多く新規顧客を獲得する」という方針を取る企業もあります。


まとめ

今回は、年商1億円を突破する3つのStepのうち、Step1である「売れる1品の確立」について詳しくお聞きしました。

ポイントは、以下の通りです。

・EC売上は、新規顧客売上とリピーター売上で構成される

・まずは年間500万〜1,000万円を作れる「売れる1品」を確立する

・初回注文だけで利益を出そうとしない

・CPOと初回LTVを見ながら、投資回収モデルを設計する

・3C視点で、顧客が買う理由を整理する

・投資判断の先送りは、将来的な顧客獲得コスト上昇につながる

食品ECは、感覚ではなく構造で伸ばす事業です。

売れる1品を作り、投資回収モデルを設計することが、年商1億円への最初のステップになります。


次回予告

次回は、食品EC対談の最終回です。

Step2「EC商圏の展開と商品の用途付加」と、Step3「業務効率化と収益性の向上」についてお届けします。

主な内容は以下の通りです。

・モール展開の考え方
・自家用からギフトへの用途付加
・バックヤードの自動化
・絶対にやってはいけないこと

次回もぜひご覧ください。

── 北條竜太郎

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