こんにちは。
北條です。
今回から3回にわたり、あるホテルのサービスについてお話しします。
前回までの連載では、沖縄最大の建設会社・國場組が700億円規模のプロジェクトに「乗らなかった」判断について考察しました。
今回の舞台は、その國場組の子会社であるテラスホテルズが運営するホテルです。
今回ご紹介するのは、
ザ・テラスクラブ ウェルネスタラソ アット ブセナ
です。
沖縄県名護市にある、わずか68室の小規模なホテルです。
リッツ・カールトンでもありません。
フォーシーズンズでもありません。
多くの方は、その名前を聞いたことすらないかもしれません。
初めて訪れたとき、私は正直驚きました。
外観は高級ホテルというより、むしろ落ち着いたマンションのような印象だったからです。
「ここが本当に高級ホテルなのだろうか」
そう感じたことを覚えています。
しかし、一歩中へ入ると全く別の世界が広がっていました。
特に印象的だったのが夜の海水プールです。
照明は控えめ。
温かな海水に身を委ねると、聞こえてくるのは波の音だけ。
話し声もなく、余計な音もありません。
静かな水面には月が映り込み、時間がゆっくり流れていきます。
この静謐さは、これまで訪れた他のラグジュアリーホテルとも違うものでした。
しかし、本当に驚かされたのは建物でも景色でもありません。
サービスです。
その特徴を一言で表現するなら、
「言われる前に、終わっている」
という言葉になります。
今回は、私自身が実際に体験した6つの出来事をご紹介します。
エクスペディアで予約していた宿泊日を間違えていたことに気付いたのは、宿泊前日の夜11時でした。
しかも予約はキャンセル不可プランです。
慌ててホテルへ電話すると、普通なら
「エクスペディアへお問い合わせください」
で終わる話です。
ところがホテルの対応は違いました。
「キャンセルで大丈夫です」
そう一言で対応してくれたのです。
さらに予約を直接ホテル予約へ切り替え、エクスペディアで予約していた料金のまま宿泊できるよう手配してくれました。
正規料金との差額はホテル側の負担です。
しかも夜11時の対応でした。
沖縄の知人からマンゴーをいただき、部屋へ持ち帰りました。
するとフロントから電話がありました。
「マンゴー、お切りしましょうか?」
お願いしたわけではありません。
30分後、綺麗に盛り付けられたマンゴーが部屋へ届けられました。
こちらが要望を口にする前に、必要だと思われることが実行されていたのです。
プールにメガネを置き忘れたことがありました。
ところが部屋へ戻ると、すでにメガネが届けられていました。
私は忘れたことすら気付いていません。
「探してほしい」と頼む以前の話です。
近隣レストランの予約をフロントへ依頼した後、そのままプールへ向かいました。
しばらくするとスタッフの方がプールまでやってきて、
「北條さま、レストランのご予約が取れました」
と伝えてくれたのです。
私はプールへ行くとは一言も伝えていません。
不思議に思って理由を聞くと、
「北條さまはこの時間帯にプールへいらっしゃることが多いので」
とのことでした。
行動パターンまで把握されていたのです。
冬の沖縄で少し肌寒い日がありました。
海辺を散歩してラウンジへ戻ると、席には温かいお茶とブランケットが用意されていました。
散歩へ行くことも、戻る時間も伝えていません。
「外から戻れば身体が冷えているだろう」
そう先回りして準備されていたのです。
車で外出してホテルへ戻ったときのことです。
駐車場へ車を停めると、スタッフがすでに鍵を持って待っていました。
理由を聞くと、ナンバープレートで私の車を把握していたとのことでした。
ここまでの6つの体験には共通点があります。
それは、
すべて自分から頼んでいない
ということです。
それでも、すべて先に完了していました。
これは単なる「気が利くスタッフ」の話では説明できません。
個人の能力だけではなく、何らかの仕組みが存在しているはずです。
なぜ、このホテルでは「言われる前に終わる」のか。
それは優秀なスタッフを集めているからではありません。
もっと再現性のある仕組みが存在しています。
次回は、このホテルが実践している「先読みの仕組み」について考えていきます。
── 北條竜太郎
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