事業を成長させられる経営者と、なかなかスケールできない経営者。その違いはどこにあるのでしょうか?
これまで多くの社長とお会いする中で感じたのは、家業を継ぐ二代目・三代目の経営者には非常に優秀な方が多いということです。親の代で事業が軌道に乗り、良い教育環境を得て、一流大学を卒業し、一流企業で経験を積んだ後に家業に戻るというパターンが少なくありません。
例えば、22歳で就職し、30代で実家に戻り、40代で社長に就任する。このようなキャリアを歩む方が多い印象です。しかし、経営者として事業をどんどん大きくしていくという視点で見ると、この「教育環境の良さ」が仇となるケースもあります。
大企業での経験を積んだ後に家業を継ぐ人は、社長としての基本業務をしっかりこなし、新商品の開発にも取り組んでいます。しかし、そこから一歩突き抜けて事業を拡大できる人は少ないのが現実です。
その理由は、「経営者としての地位を与えられた人」か、「自ら勝ち取った人」かの違いにあります。
最近、親世代の経営者と話をする機会が多く、その中でよく聞くのが、
「息子が戻るまでに工場を新しくしたい」
「息子が戻るまでに借金を整理したい」
といった言葉です。
親として、負債を抱えたまま子どもに会社を渡すのは気が引けるという気持ちはよく分かります。しかし、こうした「苦労を取り除く」ことが、結果的に後継者を甘やかし、経営者としての成長を妨げることになりかねません。
与えられた環境に甘んじてしまうと、創業者が普通に行ってきたような、新規事業の立ち上げや、時代に合わせた事業モデルの刷新ができなくなってしまうのです。
世の中には、起業に至るまでのストーリーが大きく2パターンあります。
前向きな挑戦から起業したケース
例えば、元々エリート会社員だった人が「やりたいことを見つけたから」起業するというケースです。
困難な状況をバネに起業したケース
借金や失敗など、うまくいかないことから活路を見出した人たちが、このパターンに該当します。
前者の方が母数としては多いですが、後者の人の方が経営に対するシビアな選択の連続を経験しており、それが強みとなってその後の経営に生かされるケースが多いです。
私自身、もともとは社会学の研究者を目指し、26歳まで大学に通っていました。しかし、その道でうまくいかず、一般企業に就職しました。
同期が成功していく中で、「自分も何か違うことで成果を出したい」と考え、新たなキャリアに挑戦しました。そして30歳のときに家業の食品メーカー「茜丸」に戻ることに。しかし、そこで気づいたのは、「そのまま家業を引き継ぐことのリスク」でした。
そこで私は、一度自分で創業し、事業を立ち上げる経験を積むべきだと考え、「アカネサス」を立ち上げました。現在は、食品メーカーの枠を超え、業界全体に影響を与えられるビジネスを目指しています。
少し前に話題になったビッグモーターの社長は、ポストを与えられた側の人間です。一方で、トヨタのご子息は子会社で新しい事業を立ち上げ、自ら事業を創り出す経験を積んでいます。この違いが、長期的な経営力の差となって表れるのです。
二代目・三代目経営者は、教育環境が良く、頭が良く、器用な方が多い。だからこそ、サラリーマンとしては優秀に活躍する人が多い。しかし、それゆえに「リスクを取ることを避けがち」でもあります。
本当の経営とは、ギリギリの挑戦と背水の陣の連続です。与えられたポストに入るだけでは、経営者としての強さは育ちません。
「落ちぶれたときこそ、巻き返す」
「負けたからこそ、次の一手を考える」
こうしたマインドセットこそが、事業をスケールさせるために必要なのです。
今回お伝えしたかったのは、「与えられたポストに就いたから、自分はダメだ」と思う必要はないということです。
しかし、そこに安住することなく、リスクを取って挑戦し続けることが重要です。うまくいかない状況に直面したとしても、それをエンジンにして、もう一度飛躍する。そのマインドが、事業の成功には不可欠です。
何か気づきを得てもらえたなら嬉しく思います。
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