2026.09.21

経営者の末路|【6】「裸の王様」を防ぐ仕組み【全6回】

こんにちは。
アカネサス代表の北條です。

森岡毅氏を起点に、これまで5回にわたって「存在的謙虚さ」について考えてきました。

今回が、いよいよ最終回です。

今日は、誰もが陥る可能性のある「裸の王様」を防ぐ仕組みについてお伝えします。

そして最後に、私自身の話もさせてください。


なぜ経営者は「裸の王様」になるのか

和田一夫氏も、中内功氏も、最後は「裸の王様」になりました。

周囲がイエスマンばかりになり、批判に耳を貸さなくなる。

そして、自分の物語を信じすぎてしまう。

なぜ経営者はそうなるのでしょうか。

理由は単純です。

成功するからです。

成功すると、周囲の環境は大きく変わります。

反対意見を言う人が減り、

「さすがです」

と言う人が増えていきます。

成功体験が積み重なると、

「自分は正しい」

という確信が強くなります。

そしてやがて、

「自分が間違っているかもしれない」

という可能性を考えなくなる。

これが、「裸の王様」への道です。

森岡氏も、この道を歩んでいるのではないかと私は感じています。

USJのV字回復という大きな成功。

メディアからの称賛。

「マーケティングの天才」という評価。

これほどの成功体験があれば、「自分は正しい」と思うのは自然です。

しかし、それこそが「裸の王様」への第一歩でもあります。


「裸の王様」を防ぐ3つの方法

では、「裸の王様」になることを防ぐにはどうすればいいのか。

私は、3つの方法があると考えています。


方法1:批判者を近くに置く

まず必要なのは、意図的に反対意見を言う人を近くに置くことです。

イエスマンは心地いい。

しかし、極めて危険です。

「あなたは間違っている」

と言ってくれる人を、意識的に確保しなければなりません。

中内功氏には、弟の中内力専務がいました。

しかし対立の末、力専務は会社を去りました。

批判者を排除した瞬間から、「裸の王様」への転落は始まります。


方法2:失敗を記録する

人間は、成功体験は覚えていても、失敗体験は忘れやすいものです。

だからこそ、意識的に失敗を記録する必要があります。

  • あのとき、自分は間違えた
  • あのとき、判断を誤った
  • あのとき、周囲の意見を聞かなかった

こうした記録を書き残し、定期的に読み返す。

それが、成功体験に溺れないための仕組みになります。


方法3:「負けない構造」を作らない

最も重要なのが、これです。

「負けない構造」を作ってしまうと、負けを認める必要がなくなります。

負けを認める必要がなければ、

「自分が間違っているかもしれない」

と考えなくなる。

森岡氏の「成功確率73%」という数字は、まさにこれに近いものだと私は感じています。

失敗しても、

「残りの27%に入った」

と言える。

負けを認めなくて済む。

その構造では、存在的謙虚さは育ちません。

「負けない構造」は、短期的には自分を守ります。

しかし長期的には、自分を蝕む毒にもなります。


私自身の話

ここで、私自身の話をさせてください。

22億円の負債を抱えたとき、私は「裸の王様」でした。

正確に言えば、「裸の王様」になる前に会社が倒産したのかもしれません。

民事再生。

そして、連帯保証人としての巨額の債務。

そのとき私は、正直に言えばこう思っていました。

「自分は悪くない」

「先代の経営判断のせいだ」

「環境が悪かった」

「タイミングが悪かった」

そう考えていました。

しかし、それでは前に進めませんでした。

私は12年間もの間、債務を抱え、自己破産の決断ができませんでした。

「自分は悪くない」と思っていたからこそ、

「自己破産する自分」

を認められなかったのです。

12年かけて、ようやく決断しました。

そのとき、初めて思いました。

自分にも責任があった。

たとえ経営判断に直接関わっていなかったとしても、その会社にいたのは自分です。

連帯保証人になったのも自分です。

「自分には責任がない」と思い続けることは、

「自分は悪くない」と思い続けることと同じでした。

それもまた、一種の「裸の王様」だったのかもしれません。


存在的謙虚さは「仕組み」で守る

存在的謙虚さは、意志の力だけでは維持できません。

成功すればするほど、

「自分は正しい」

という確信は強くなります。

だからこそ、仕組みが必要です。

  • 批判者を近くに置く仕組み
  • 失敗を記録する仕組み
  • 「負けない構造」を作らない仕組み

私は今、小さな会社を経営しています。

社員は6人。

売上は2億円程度。

まだ「裸の王様」になるほどの成功はしていません。

しかし、だからこそ今のうちに、仕組みを作っておきたいのです。

  • 「あなたは間違っている」と言ってくれる人をそばに置く
  • 失敗を記録し、定期的に振り返る
  • 「負けない構造」に逃げない

これが、私なりの「裸の王様」防止策です。


森岡氏への問い

最後に、森岡氏への問いを記しておきます。

あなたの周りに、

「あなたは間違っている」

と言ってくれる人はいるでしょうか。

自分の失敗を記録し、定期的に振り返っているでしょうか。

そして、「負けない構造」に頼っていないでしょうか。

イマーシブ・フォート東京の閉業は、

「27%に入った」

で済ませていいのでしょうか。

「私の判断が間違っていた」

と公に言えるでしょうか。

これは批判というより、切実な問いです。

そして同時に、私自身への問いでもあります。


おわりに

全6回にわたって、

「なぜ私は森岡毅が嫌いなのか」

というテーマを起点に考えてきました。

結論は、こうです。

森岡氏に欠けているのは、能力ではありません。

欠けているのは、存在的謙虚さです。

  • 自分はいつか死ぬ
  • 自分には分からないことがある
  • 自分ではどうにもならないことがある

これらを受け入れる覚悟です。

そしてこの問いは、森岡氏だけの問題ではありません。

成功した経営者すべてに突きつけられる問いです。

私自身も、いつか成功したとき、同じ問いに直面するでしょう。

そのとき「裸の王様」にならないために、今から仕組みを作っておきたい。

この連載を書きながら、そう強く思いました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


編集後記

6回の連載を終えて、思うことがあります。

森岡氏を批判しながら、実は自分自身を見つめていました。

私の中にも「隠す傲慢」があり、「負けない構造」に逃げたくなることがあります。

「裸の王様」になる可能性は、誰にでもある。

だからこそ、この連載は私自身への戒めでもありました。

もし読んでくださった方の中に、ご自身を振り返るきっかけが生まれたのなら、これほど嬉しいことはありません。

第1回で、こう書きました。

あなたの直感は、たぶん正しい。

カリスマに違和感を覚えること。

称賛の声の中で、一人だけ「何かおかしい」と思うこと。

その直感を、大切にしてください。

── 北條竜太郎

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