こんにちは。
北條です。
前回は、セガの入交昭一郎氏が倒産寸前だったNVIDIAに500万ドルの出資を決断した話をお伝えしました。
今回は、その判断がどのような結末を迎えたのかを見ていきます。
入交氏の判断は正しかったと言えるでしょう。
NVIDIAはセガからの500万ドルを元手に新たなチップ開発へ全力を注ぎ込み、1997年に「RIVA 128」を発表します。
この製品が大ヒットし、NVIDIAは倒産の危機を脱しました。
さらに1999年、NVIDIAはナスダック市場へ上場。
公募価格は1株12ドルでしたが、上場初日の終値は20ドル近くまで上昇しました。
入交氏の目は確かでした。
そして、ジェンスン・フアン氏への信頼も間違っていなかったのです。
しかし、その頃のセガはまったく違う戦場で苦戦していました。
家庭用ゲーム機「ドリームキャスト」は、ソニーのプレイステーションとの競争で劣勢に立たされていました。
1999年3月期の赤字は430億円。
続く2000年3月期も430億円の赤字。
3期連続の赤字です。
会社には、とにかく現金が必要でした。
そこでセガは保有していたNVIDIA株75万株を、1999年4月から9月にかけてすべて売却します。
売却額は1,500万ドル。
500万ドルの出資が3倍になったのです。
数字だけを見れば、十分に成功した投資と言えるでしょう。
では、もしセガがその株を持ち続けていたらどうなっていたのでしょうか。
NVIDIAは2000年以降、複数回の株式分割を実施しました。
当時の75万株は、現在では約3億6,000万株相当になります。
そして現在のNVIDIA株価は約180ドル。
計算すると、
3億6,000万株 × 180ドル = 約650億ドル
日本円に換算すると、およそ10兆円です。
10兆円という数字は、あまりにも大きすぎて現実感がありません。
現在のセガサミーホールディングスの時価総額は約4,000〜5,000億円です。
もしNVIDIA株を持ち続けていたなら、その保有資産だけで自社の時価総額を大きく上回る企業になっていた計算です。
さらには、現在の任天堂の時価総額を超える規模の資産を保有していた可能性もあります。
では、セガは株を売るべきではなかったのでしょうか。
私はそうは思いません。
重要なのは結果論ではなく、その時点で何が起きていたかです。
NVIDIAの株価が本格的に上昇を始めるのは2015年以降です。
セガが売却した1999年から2015年まで、およそ16年間。
その間、NVIDIA株は長期間にわたり横ばいか低迷を続けていました。
一方のセガは、
など、厳しい経営環境に置かれていました。
財務的に苦しい企業が、16年間も成果の見えない株式を持ち続けることは現実的ではありません。
仮に1999年に売却しなかったとしても、2001年や2003年には同じ理由で売却していた可能性が高いでしょう。
つまり、
NVIDIA株を手放した原因と、セガが苦境に陥った原因は同じだった
ということです。
興味深いのは、NVIDIA株売却の最終決裁をしたのも入交氏自身だったという点です。
会社を救うために出資を決断した人物が、
会社を存続させるためにその株を売却する決断もした。
自分が救った会社の株を、自分の判断で手放したのです。
そして2000年、入交氏はセガを去りました。
正しい判断をした人物が、その果実を自ら受け取ることはありませんでした。
10兆円という数字だけを見ると、
「セガは巨大な機会損失をした」
という話に見えるかもしれません。
しかし経営の現場では、未来を知ることはできません。
その時点で生き残るために必要な判断を下すしかないのです。
入交氏は、
どちらも会社を守るために行いました。
では、その結果として入交氏は何も得られなかったのでしょうか。
最終回では、その答えについて考えてみたいと思います。
── 北條竜太郎
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