こんにちは。
北條です。
今日から3回にわたって、ある経営判断についてお話しします。
今回のテーマはゲーム業界、そして半導体業界の話です。
食品業界とは関係のない話に思えるかもしれません。
しかし最後まで読んでいただければ、きっとご自身の事業や経営判断に重ね合わせて考えていただけると思います。
1996年。
シリコンバレーの小さなスタートアップ企業が、倒産寸前に追い込まれていました。
その会社の名前はNVIDIA(エヌビディア)。
現在では時価総額400兆円を超え、AIチップ市場を牽引する世界有数の半導体企業です。
しかし当時は、社員数も200人に満たない無名のベンチャー企業でした。
当時のNVIDIAは、セガの家庭用ゲーム機「ドリームキャスト」向けのグラフィックチップを開発していました。
ところが、NVIDIA自身の戦略ミスによって開発は失敗します。
後にCEOのジェンスン・フアン氏は当時を振り返り、こう語っています。
「プロジェクトを完了させてから死ぬか、打ち切ってすぐ死ぬか。そんな状況に直面した」
フアン氏は、セガとの契約を自ら打ち切る決断を下しました。
自社のミスによって契約を守れなかった以上、支払いは止まります。
資金も尽きます。
それは事実上の死刑宣告でした。
絶体絶命の状況の中、フアン氏はセガ米国法人トップを務めていた入交昭一郎氏のもとを訪ねます。
入交氏は、ホンダ副社長を務めた後にセガへ転じた経営者でした。
そこでフアン氏が口にしたのは、常識では考えられない要求でした。
「契約金額を全額支払ってもらえないか」
自社のミスで契約を履行できなかった会社が、それでも契約金を支払ってほしいと求めたのです。
普通に考えれば、即座に断られて当然の話でした。
しかし、入交氏は違いました。
後にインタビューで、こう語っています。
「私はまだ彼を信じていた」
フアン氏と向き合い、話を重ねてきた中で、その能力と誠実さを見抜いていたのです。
数日前に契約不履行を起こした無名のスタートアップ。
それでも信じると決めた。
入交氏は日本へ戻り、セガの役員会でこう提案します。
「NVIDIAに出資すべきだ」
役員会はこの提案を承認。
500万ドルの追加出資が決定しました。
当時のNVIDIAにとって、それは会社の全資産に匹敵するほどの巨額資金でした。
なぜ入交氏は、この判断ができたのでしょうか。
投資回収の計算ができたわけではありません。
将来の成功を数字で証明できたわけでもありません。
リスクとリターンを精緻に分析した結果とも言い切れません。
そこにあったのは、
「人を信じる」
という判断でした。
もちろん経営において、感情だけで判断することは危険です。
しかし、最後の最後で人を見て決断しなければならない場面もあります。
数字では測れないものを信じる勇気。
それが、この決断にはあったのではないでしょうか。
もし入交氏が、このときNVIDIAを見捨てていたらどうなっていたでしょうか。
現在のAI革命は起きていなかったかもしれません。
そして、この500万ドルの決断は後に想像を超える結果を生み出します。
次回は、この異例の判断が何をもたらしたのかをお伝えします。
── 北條竜太郎
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