2026.07.01

輸出は“利益率3%の壁”を越えられるか──高収益業種と海外市場の相関

こんにちは。
アカネサス代表の北條です。

今回は、信用情報機関(TSR)の実データを集計した
**「食品業界ビッグデータ分析」(全9回)**の第7回をお届けします。


食品メーカーに立ちはだかる「利益率1%の壁」

第1回で示した通り、食品メーカーの平均像は以下の通りです。

  • 従業員1人あたり売上高:約2,173万円/人

  • 営業利益率:1.0%

  • 自己資本比率:30.2%

つまり、

売上は小さく、利益は1%、資本は30%台

という、非常に脆弱な構造にあります。

この「利益率1%の壁」を越える手段のひとつとして、
多くの企業が注目しているのが──

輸出(海外市場)です。


TSRデータが示す「高収益業種」

まず、TSRの財務データから
利益率3%以上の企業が多い業種を抽出すると、
いくつかの特徴的なカテゴリが見えてきます。


菓子系(構造で明暗が分かれる)

  • 生菓子製造業(和菓子・洋菓子):221社

  • 菓子小売業(製造直売):128社

  • ビスケット・干菓子製造業:74社

同じ「菓子」でも、

  • 土産菓子 → 低収益に沈みやすい

  • ブランド菓子・製造直売 → 高収益層に集中

という、構造的な分岐が明確に存在します。


酒・飲料・調味料(安定的な高収益カテゴリ)

  • 清酒製造業:103社

  • 清涼飲料製造業:82社

  • その他調味料製造業:62社

これらは、

国内外ともに需要が安定し、輸出とも親和性が高い

カテゴリです。


冷凍・中食・水産(保存性×流通対応)

  • 冷凍調理食品製造業:56社

  • 弁当・調理パンなど:75社

  • 水産加工品:144社

これらは、

国内需要縮小の中でも伸びる“構造型勝ち筋”

として、高収益層に登場しています。


番外:食品機械メーカー

  • 食品機械・装置製造業:215社

食品そのものではありませんが、

食品産業を支える“装置側”が高収益である

点は見逃せない特徴です。


輸出統計が裏付ける「伸びているカテゴリ」

農林水産省の発表によると、
2024年の食品輸出額は

1兆5,073億円(過去最高、12年連続増加)

となりました。

特に伸びているのは以下のカテゴリです。


  • 酒類(日本酒・ウイスキー)
     → この10年で3倍以上に拡大

  • 調味料(しょう油・みそ・だし)
     → 家庭用・業務用ともに拡大

  • 菓子類
     → 香港・台湾・ASEANで伸長

  • 冷凍食品
     → アジア市場で需要増大


ここで重要なのは、

TSRデータで“高収益”の業種と、輸出で伸びている業種が一致している

という点です。


問いかけ

御社の業種は、

「高収益 × 輸出成長」カテゴリに入っていますか?

  • 入っている → 利益率3%以上の層に入る可能性がある

  • 入っていない → 国内外ともに「1%の壁」に沈むリスクが高い


結論:輸出は“誰でも勝てる手段”ではない

輸出は確かに有効です。

しかし、その本質はこうです。


輸出で勝てる業種

  • ブランド菓子(製造直売)

  • 酒・飲料

  • 調味料

  • 冷凍食品

  • 水産加工

構造的に高収益を作れる業種


輸出でも勝てない業種

  • 惣菜OEM

  • 観光依存型土産菓子

そもそも高収益構造に入っていない


つまり、

輸出は万能ではない。
“勝ち筋業種だけが壁を突破できる武器”である。


次回予告

第8回は

「承継問題」

をテーマに扱います。

  • 社長年齢

  • 後継者不在

  • 縮小均衡

これらが業績にどう影響しているのかを、
データから明らかにします。


── 北條竜太郎

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