こんにちは、北條です。
これまでの記事で、建築費の高騰について触れてきましたが、今回は改めて、
「なぜ建築費がここまで上がっているのか?」
その理由を一度まとめてお伝えしたいと思います。
というのも、もし老朽化が進んでいるにも関わらず、まだ工場の建て替え計画を立てていないという方がいらっしゃるならば…
ぜひ、危機感を持っていただき、後悔のないよう早めに動き出してほしいからです。
多くの企業が、高度経済成長期(1955〜1973年)に工場を建設しました。
そのため、既に50年以上が経過しているケースも多く、耐用年数を過ぎた工場を使い続けている会社も少なくありません。
つまり、今後も事業を継続していくためには、工場の建て替えは避けられない課題です。
しかし現在、建築費が年々高騰している状況にあります。
その背景にあるのが、次の3つの大きな理由です。
まずは「材料費」の高騰です。
コロナ禍や戦争など、世界的な社会情勢の影響
オリンピックや万博など、国内の大型イベントによる建材需要の集中
これらが複合的に影響し、建築資材が不足し価格が高騰しています。
特に深刻なのが「電線」の不足。
この問題は、大阪万博やIR(統合型リゾート)の建設によって、今後さらに悪化することが予想されています。
つまり、2030年ごろまで建材価格は右肩上がりで推移する可能性が高いということです。
建築費の高騰には、工場に求められるスペックの変化も影響しています。
これには大きく分けて、次の2つの要因があります。
たとえば「前室」などの衛生対策設備。
かつては不要だったこれらの設備が、**現在では設計上「当たり前」**になっています。
これは、HACCPの導入をはじめとする食品衛生に関する基準が厳しくなったことが要因です。
50年前と比べて、求められるベーススペックが大幅に上昇しています。
いわば、昔の車と今の車の違いと同じです。
昔はシンプルな構造でもよかったものが、今では自動ブレーキ・カーナビ・エアバッグが標準装備。
当然、コストも上がります。
2005年の「姉歯事件」をご存知でしょうか?
構造計算の偽装問題により、建築基準法は大きく改正されました。
以前は、コストを下げるために耐震性能などをギリギリで抑えた設計も通っていましたが、今ではそうはいきません。
設計士は法律を守らない設計はできない時代です。
違反すると、公共事業などの入札資格を失ってしまうリスクがあるからです。
つまり、
設備の高度化によって妥協できない
法改正によって安価な設計ができない
という二重の縛りが、建築費を押し上げているのです。
最後の要因は、建築業界における働き方改革です。
これまでは、長時間労働や深夜作業で大量生産が可能でした。
しかし、2024年から建設業の時間外労働の上限規制が完全施行されます。
2019年から始まったこの制度改革では、
時間外労働に上限を設け
違反企業には懲役刑や罰金、公共事業への入札制限
といった厳しい罰則も設けられています。
この結果、人件費はさらに高騰し、納期も長期化する傾向にあります。
以上が、私が考える建築費高騰の3つの主な理由です。
特に、スペックの標準化・高度化という点は、売上や利益の規模が小さい企業にとって、非常に大きな負担になります。
もちろん、建築費の一部を補助金でカバーするという手段もあります。
しかし、
条件に合わない
申請に間に合わない
業種的に対象外である
などの理由で、必ずしも補助金が使えるとは限りません。
実際に、建築コストの上昇が原因で、
廃業
事業譲渡
を検討する会社も増えてきています。
今後の事業継続において、工場の存在は不可欠です。
もし、老朽化が気になる状況であれば、早めの建て替え計画を強くおすすめします。
ぜひ、後悔のない選択をしてください。
それでは、本日はここまでにします。ありがとうございました。
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